「愛犬がくしゃみを連発している」「透明な鼻水が出ている」「なんだか鼻をズーズー鳴らす発作のような動きをする」——犬のくしゃみや鼻水は、飼い主さんが不安になりやすいサインのひとつです。くしゃみそのものは犬にとってごく自然な反応で、多くは心配のいらないものです。ただ、なかには動物病院で診てもらったほうがよいケースもあります。
この記事では、犬のくしゃみ・鼻水の主な原因、まぎらわしい「逆くしゃみ」との見分け方、鼻水の色でわかること、おうちでできること、そして「こんなときは受診を」という目安までをまとめました。読了の目安は約4分です。
犬のくしゃみ・鼻水の主な原因
犬のくしゃみは、鼻の粘膜が何らかの刺激を受けたときに、それを外に出そうとして起こる防御反応です。原因はさまざまで、身近な環境によるものから、体調に関わるものまで幅があります。代表的なものを見ていきましょう。
ほこり・においなどの物理的な刺激
もっとも多いのが、ほこりや花のにおい、香水・柔軟剤・タバコの煙・スプレーといった刺激です。鼻に入った異物を出そうとして、一時的にくしゃみが出ます。刺激がなくなれば自然に落ち着くことがほとんどで、元気や食欲がふだんどおりなら過度に心配する必要はありません。散歩中に地面のにおいをかいだあとにくしゃみをする、というのもよく見られる光景です。
空気の乾燥
空気が乾燥すると鼻の粘膜も乾きやすくなり、くしゃみが出やすくなることがあります。とくに冬場やエアコンを使う季節は、部屋の湿度が下がりがちです。粘膜が乾くと本来のバリア機能が弱まり、ほこりやウイルスなどの刺激を受けやすくなるともいわれています。暖房をつけ始めた時期からくしゃみが目立つようになった、というときは乾燥が関わっているのかもしれません。
ウイルスや細菌などの感染
「ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)」などの呼吸器の感染では、乾いた咳を中心に、くしゃみや鼻水がみられることがあります。原因となるウイルスや細菌はいくつか知られており、ドッグランやペットホテルなど犬が集まる場所ではうつりやすいといわれています。子犬や高齢の犬では長引くこともあるため、咳や鼻水が続くときは動物病院での確認が安心です。感染の有無や種類は見た目だけでは判断できません。
アレルギー
花粉やハウスダスト、カビ、特定の食べ物などに反応して、くしゃみや鼻水、皮膚のかゆみが出ることがあります。人間の花粉症のように、季節や環境によって症状が変わる場合もあるといわれています。特定の場所や時期に症状が出やすいときは、環境の中に原因が隠れていることも考えられます。
歯や口のトラブル
意外に思われるかもしれませんが、歯や歯ぐきのトラブルがくしゃみや鼻水につながることもあります。犬の上あごの奥歯は鼻の近くにあるため、歯周病などの炎症が鼻に影響することがあるといわれています。口臭が強い、片側だけ鼻水が出る、歯みがきをいやがるようになったといったときは、口の中もあわせて診てもらうとよいでしょう。
鼻に入った異物
犬は地面のにおいを熱心にかぐため、草の種やほこりなどの小さな異物が鼻に入ってしまうことがあります。異物が入ると、急に激しいくしゃみを繰り返したり、片側の鼻だけから鼻水や出血が出たりすることがあるといわれています。散歩のあとから突然くしゃみが止まらなくなった、というときは、鼻の中に何か入っていないか動物病院で確認してもらうと安心です。
逆くしゃみとふつうのくしゃみの見分け方
犬に特徴的なのが「逆くしゃみ」と呼ばれる動きです。鼻から「ズーズー」「ブーブー」と勢いよく空気を吸い込み、苦しそうに見えるため、初めて見た飼い主さんはとても驚きます。ふつうのくしゃみが空気を「吐き出す」のに対して、逆くしゃみは空気を「吸い込む」ときに起こる発作様の呼吸で、まったく別のものです。
逆くしゃみは、チワワやトイプードルなどの小型犬、パグやシーズーなどの短頭種(鼻がつまった顔立ちの犬種)で比較的よくみられるといわれています。多くは数秒から1分ほどで自然におさまり、そのあとはけろっとしていることがほとんどです。興奮したとき、水を飲んだあと、リードで首がひっぱられたときなどに起こりやすいとされ、生理的なもので心配のいらないケースが多いといわれています。
ふつうのくしゃみ…「ハクション」と空気を勢いよく吐き出す。単発〜数回で止まることが多い。
逆くしゃみ…首を伸ばして「ズーズー」と空気を吸い込む発作様の動き。数秒〜1分ほどでおさまり、あとはふだんどおりなことが多い。
ただし、逆くしゃみが1日に何度も繰り返す、時間が長引く、ぐったりする、鼻水や咳をともなうといった場合は、体調に関わるサインが隠れていることもあります。頻繁に起こるときは、動画に撮って動物病院で相談すると判断の助けになります。なお、くしゃみ・逆くしゃみと似て見えるものに「しゃっくり」もあります。それぞれの違いは次の記事でくわしくまとめています。

鼻水の色・状態でわかること
鼻水の状態は、体の中の様子を知る手がかりになります。透明でサラサラした鼻水は比較的軽いことが多い一方、色や粘り気、片側だけかどうかには注意したいポイントがあります。
透明・サラサラ…ほこりや乾燥、軽い刺激などで出やすいタイプ。ほかに元気なら様子を見られることが多い。
白っぽく粘る…粘膜の炎症が起きているサインのことがある。
黄色・緑色っぽい/膿のよう…感染が進んでいる可能性があり、動物病院での確認がすすめられる状態。
血が混じる/片側だけ…鼻の中の異物や、ほかのトラブルが隠れていることもあり、早めに受診を検討したいサイン。
犬は鼻がつまるとにおいがわかりにくくなり、食欲が落ちることがあります。「くしゃみ・鼻水+ごはんを食べない」の組み合わせは、早めに気づいてあげたいポイントです。
おうちでできること
軽い刺激や乾燥によるくしゃみ・鼻水であれば、生活環境を整えることでやわらぐことがあります。無理のない範囲でできる工夫を紹介します。
適度な湿度をたもつ
空気が乾く季節は、加湿器などを使って部屋の湿度を保つと、鼻の粘膜の乾燥をやわらげる助けになります。犬が快適に過ごせる湿度の目安は50〜60%程度といわれています。加湿しすぎるとカビの原因にもなるため、湿度計で確認しながら調整するとよいでしょう。エアコンの風が犬に直接あたらないように配置を工夫するのもおすすめです。
こまめな掃除でほこりを減らす
床のほこりや抜け毛は、くしゃみの原因になりやすいものです。こまめに掃除機やフローリングワイパーをかけ、犬のまわりを清潔に保ちましょう。とくに換毛期は抜け毛が増え、ほこりと一緒に舞いやすくなります。寝床やクッションも定期的に洗って、ハウスダストをためこまないようにしたいところです。
空気をきれいにたもつ
タバコの煙や香りの強い柔軟剤・芳香剤・スプレーは、犬の鼻には強い刺激になることがあります。犬のいる空間ではできるだけ控え、換気や空気清浄機で空気環境を整えてあげましょう。ペットのいる家庭向けの空気清浄機の選び方は、こちらの記事で紹介しています。

多頭飼いのときは感染の広がりに注意
複数の犬と暮らしている場合、感染によるくしゃみや咳は、食器やおもちゃ、近い距離での接触を通じてほかの犬に広がることがあります。1頭がくしゃみや鼻水を出しているときは、しばらく生活スペースを分ける、食器を共用しないといった配慮があると安心です。多頭飼いで気をつけたいことは、次の記事でくわしくまとめています。

こんなくしゃみ・鼻水は動物病院へ
おうちでのケアは、あくまで軽い刺激や乾燥への対応です。次のようなサインが見られるときは、自己判断で様子を見続けず、早めに動物病院に相談しましょう。
- くしゃみが連続して止まらない、または数日以上続く
- 黄色や緑色の、膿のような鼻水が出ている
- 鼻血が出ている、片側だけから鼻水や出血がある
- 鼻づまりや咳で呼吸が苦しそう、口を開けて呼吸している
- 逆くしゃみが何度も繰り返す、長引く、ぐったりをともなう
- 食欲が落ちている、ごはんを食べない
- 元気がなく、ぐったりしている
受診の前に、くしゃみや逆くしゃみの回数・時間帯、鼻水の色、いつから続いているかをメモしておくと、診察がスムーズになります。スマートフォンでくしゃみや呼吸の様子を動画に撮っておくのもおすすめです。診察室ではふだんの症状が出ないこともあるため、家での様子を伝えられると獣医師の判断の助けになります。
とくに子犬や高齢の犬、短頭種、持病のある犬は体調をくずしやすいため、早めの受診が安心です。呼吸が苦しそうなときや、ぐったりして水も飲めないようなときは、できるだけ早く受診を検討してください。最終的な診断や治療の判断は、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
犬のくしゃみ・鼻水に関するよくある質問
- Q犬が逆くしゃみをするのは病気ですか?
- A
逆くしゃみは、小型犬や短頭種で比較的よくみられる動きで、多くは数秒から1分ほどで自然におさまる生理的なものといわれています。そのあとにふだんどおりなら、過度に心配しなくてよいことが多いとされます。ただし、何度も繰り返す・長引く・鼻水や咳をともなう・ぐったりするといった場合は、動画に撮って動物病院で相談すると安心です。
- Q透明な鼻水なら様子を見てもいいですか?
- A
透明でサラサラした鼻水は、比較的軽いことが多いといわれています。元気や食欲がふだんどおりなら、環境を整えながら様子を見られることもあります。ただし、色が黄色や緑に変わってきた、量が増えた、片側だけから出る、ほかの症状が出てきたといった変化があれば、受診を検討してください。
- Q犬のくしゃみは人にうつりますか?
- A
犬のくしゃみや咳の原因となる多くのウイルスや細菌は、犬どうしでうつるもので、人にうつることは一般的ではないとされています。ただし、ほかの犬にはうつることがあるため、ドッグランやペットホテルなど犬が集まる場所や、多頭飼いの場合は配慮があると安心です。気になる場合はかかりつけの獣医師に相談してください。
まとめ
犬のくしゃみや鼻水の多くは、ほこりや乾燥といった身近な刺激による一時的なもので、環境を整えることでやわらぐことがあります。ズーズーと空気を吸い込む「逆くしゃみ」も、多くは生理的なものといわれています。一方で、膿のような鼻水・止まらない連続くしゃみ・鼻血や片側だけの鼻水・呼吸のしづらさ・食欲不振などがそろうときは、体調に関わるサインの可能性があります。「回数」「鼻水の状態」「ほかの症状」の3つを目安に、いつもと違うと感じたら早めに動物病院へ相談してあげてください。日ごろの掃除や適度な加湿、きれいな空気づくりも、愛犬の鼻を守る助けになります。
