猫と暮らしていると、防災の話は後回しになりがちです。でも猫の避難は、犬とは違う準備が要ります。
キャリーに入ってくれない。隠れて出てこない。避難所で脱走する。どれも実際に起きています。
環境省の資料をもとに、猫の同行避難・持ち物リスト・脱走対策・防災グッズを順に整理しました。
猫の「同行避難」と「同伴避難」は意味が違う
まず言葉を分けておきます。混同したまま準備すると、避難所で想定と現実がずれます。
同行避難は避難所までの「行動」を指す
環境省は同行避難を「飼い主が飼養しているペットを同行し、安全な場所まで避難する避難行動」と定義しています。
同伴避難は避難先での「状態」を指す
同伴避難は「避難所など避難した場所(敷地内や建物等)で飼い主がペットを飼養、管理していること」を指す言葉です。
環境省のリーフレットには「同行避難とは、避難所までの避難行動(行為)のことをいいます」「避難所で、ペットと人が同じスペースで過ごすことなどの(同伴避難)を指すものではありません」とあります。
一緒に逃げられることと、一緒の部屋で過ごせることは別。分けて考えると当日あわてずに済みます。
受け入れ方は自治体と避難所で分かれると知っておこう
環境省の自治体向けチェックリストは、国と現場のずれをはっきり書いています。
「これまでの災害では、指定避難所で実際にペットを受入れるかどうかは避難所ごと(避難所運営組織、避難所運営管理者)の判断とされることが多く、同行避難を推奨する国と、指定避難所での受入れ態勢の間にはずれが生じてきました」
環境省「人とペットの災害対策ガイドライン 災害への備えチェックリスト」令和3年3月発行より
運用も自治体でばらばらです。能登半島地震の記録集に、各市町の回答が原文のまま載っています。
| 自治体 | 避難所での受け入れルール |
|---|---|
| 珠洲市 | 一般の指定避難所への屋内同伴は不可。同伴を認めた避難所では可 |
| 小松市 | ペットとともに避難所屋内への避難を禁止 |
| 七尾市 | ペット同伴の避難者用スペースにて受入 |
| 穴水町 | 複数の部屋がある避難所ではペット連れと一般避難者をゾーニング |
| 羽咋市 | 車での避難者は、ペットは車内で飼養管理 |
| かほく市 | ペットはケージに入れて飼育し、世話は飼い主が行う |
同じ石川県内でも、屋内不可の市もあれば専用スペースを設けた市もありました。住む地域を先に調べましょう。
猫の防災が犬と違う3つのポイント
犬と共通する部分は多いのですが、猫にだけ強く出る弱点が3つあります。
キャリーに入らない猫が最大の壁になる
能登半島地震の記録集には、仮設住宅の段階でこんな例が確認されたと書かれています。
「ケージでの飼養経験がなく(猫)、ケージに入ることを嫌がるため旧自宅で飼養(放し飼い)を継続し、仮設住宅での飼養を断念した例が確認された」
慣れていないと避難できないだけでなく、そのあとの暮らしまで選べなくなります。
環境省が猫のしつけに挙げる一番目も「ケージなどの中に入ることを嫌がらないように、日頃から慣らしておく」です。
脱走のリスクを最初から織り込もう
猫は驚くと狭い場所へ走ります。慣れない避難所や仮設住宅では、その一瞬が行方不明につながります。
記録集は仮設住宅について「玄関が二重扉になっていないため、飼い主が出入りする際に逸走する危険がある」と指摘しています。
所有者明示が猫は極端に弱い
石川県が飼い主不明として保護収容した動物のうち、所有者を明示する表示物を着けていたのは犬10頭のみ。
猫は0頭でした。10頭の犬はすべてマイクロチップで、うち3頭が飼い主のもとへ返っています。
同じ記録集に「マイクロチップは装着していましたが、飼い主情報が登録されていないため、飼い主が判明しなかった事例がみられました」とあります。
チップは入れて終わりではありません。登録と、引っ越し後の情報更新までがワンセットです。
今日からできる猫の備え
キャリーとケージを安心できる場所にしておこう
病院のときだけ出すキャリーは、猫にとって嫌な記憶とセットになります。まず出しっぱなしにします。
避難所ではケージの中で過ごす時間が長くなります。ケージ飼いを条件にしている自治体もあります。
できる限り室内で飼おう
環境省の猫のチェック項目には「できる限り室内で飼養する」とあり、理由も添えられています。
「放し飼いだと災害時に行方不明になることが多い」。外飼い猫が当日戻らず同行避難できなかった例も挙がっています。
マイクロチップと迷子札を両方そろえよう
環境省の猫向けリストは、首輪と迷子札、そしてマイクロチップの2本立てです。首輪には条件が付きます。
「猫の首輪はひっかかりを防止するために、力が加わると外れるタイプがよいと言われるが、これを利用する場合はマイクロチップの装着を強く推奨する」
外れやすい首輪は事故を防ぎますが、外れた瞬間に身元も消えます。だからチップで裏を取ります。
動物愛護管理法では、ブリーダーやペットショップが販売する犬猫への装着と登録が義務。譲り受けた猫は推奨です。
装着は動物病院などで行い、猫は生後4週齢ごろから可能とされています。装着後は環境省のデータベースに登録します。
フードと水を5日分以上ためておこう
環境省の備蓄リストは、ペットフードと水を少なくとも5日分、できれば7日分以上としています。
支援物資はすぐ届きません。届いてもいつものフードとは限らず、食べてくれずに困った例も記録されています。
避難生活では食欲やトイレの回数が変わることがあります。持病がある猫や、いつもと様子が違うと感じたときは、自己判断せずかかりつけの動物病院に相談してください。
移動時の保定にはハーネスも役立ちます。猫用ハーネスの選び方は別記事にまとめました。

猫の防災 持ち物リスト
環境省は備蓄品を優先順位1から3で示しています。猫に関わる注記も一緒に拾います。
優先順位1は命と健康に直結する
| 持ち物 | 猫の場合のポイント |
|---|---|
| 療法食、薬 | 予備を多めに。薬の名前と量をメモに残す |
| ペットフード、水 | 少なくとも5日分、できれば7日分以上 |
| キャリーバッグやケージ | 環境省は猫や小動物には避難時に欠かせないアイテムと明記 |
| 予備の首輪、リード | 伸びないものを選ぶ |
| ペットシーツ | トイレ以外の汚れ処理にも使える |
| 排泄物の処理用具 | 避難所では処理は飼い主の責任になる |
| トイレ用品 | 使い慣れた猫砂、または使用済猫砂の一部 |
| 食器 | 折りたためるものが荷物になりにくい |
猫砂の行に注目してください。新品ではなく「使い慣れた」砂、あるいは「使用済猫砂の一部」とあります。
においが変わるとトイレを使わなくなる猫がいるためです。避難用の袋に少量入れておくだけで違います。
優先順位2は情報をまとめておく
写真は飼い主と一緒に写ったものがあると、自分の猫だと示すときに役立ちます。柄が写る角度も1枚。
優先順位3に猫だけの2品が入っている
タオル、ブラシ、ビニール袋、においが付いたおもちゃ。ここまでは犬猫共通です。
そのあとに、猫の飼い主が見落としやすい2品が並びます。洗濯ネットと、ガムテープです。
「洗濯ネットなど(猫の場合は屋外診療・保護の際に有用)」
「ガムテープやマジック(ケージの補修、段ボールを用いたハウス作り、動物情報の掲示など多用途に使用可能)」
どちらも百円台からそろいます。この2つを入れておくかどうかで、当日の動きがかなり変わります。
猫を安全に運ぶ方法
キャリーの扉はガムテープで固定しておこう
環境省は同行避難の準備例で、猫の場合の手順をこう書いています。
「キャリーバッグやケージに入れる」「キャリーバッグなどの扉が開いて猫が逸走しないようにガムテープなどで固定するとよい」
避難中は人にぶつかったり荷物を落としたりします。留め具がひとつなら、開く前提で考えておきます。
ガムテープはキャリーの持ち手に1巻きくくり付けておくと、探さずに済みます。マジックも一緒に。
洗濯ネットは使いどころを決めておこう
洗濯ネットは環境省の備蓄リストにある道具です。用途は「屋外診療・保護の際に有用」と限定されています。
袋状のネットに入れると暴れても爪や歯が届きにくくなり、獣医師が処置しやすくなります。
洗濯ネットは通気や保護の面でキャリーの代わりになりません。環境省が避難時に欠かせないと挙げているのはキャリーバッグやケージのほうです。
ネットに入れてからキャリーへ、が基本の流れ。長時間そのままにするのは避けてください。
普段の爪切りや通院で一度使っておくと、猫も飼い主も手順を覚えられます。ぶっつけ本番は難しいです。
多頭飼いは1匹1キャリーを基本にしよう
仲の良い猫でも非常時は別です。パニックになった猫が同居猫を攻撃することがあります。
頭数分のキャリーを用意し、誰がどれを持つか家族で決めておきます。手が足りないなら順番も決めます。
記録集には、仮設住宅の狭さを理由に複数頭のうち1頭だけと同居し、ほかを預けた例も載っています。
脱走そのものへの対策は、玄関まわりの工夫を含めて別記事で詳しく扱っています。

避難所と車中での猫の過ごし方
ケージの中で落ち着ける状態をつくろう
能登の避難所では、施設内での放し飼いのトラブルが2つの町から報告されています。基本はケージ内です。
猫は暗く狭い場所で落ち着きます。ケージの一部に布をかけて視線を遮ると、鳴き声が減ることがあります。
使い慣れた毛布やタオルを入れておくと、においの手がかりで安心しやすくなります。
トイレ砂は使い慣れたものを少し持ち出そう
避難所ではペットシーツや猫砂の支援要望があった、と記録集にもあります。届く保証はありません。
車中で過ごすなら温度と水を最優先に
環境省が2市3町の119か所を巡回した調査では犬43頭、猫22頭が確認され、猫6頭は車中での飼養でした。
環境省は「ペットだけを車中に残すときは、車内の温度に常に注意し、十分な飲み水を用意しておく」としています。
においと鳴き声への配慮を先回りしよう
避難所には動物が苦手な人もアレルギーの人もいます。能登でも猫アレルギーの避難者とトラブルが起きました。
対応はテントの設置や別室の用意でした。指定された場所を守ることが、いちばんの配慮になります。
排泄物はためずにその都度片づけ、においが漏れにくい袋へ。抜け毛もこまめに集めます。
猫の防災グッズの選び方
ここからは具体的なグッズです。価格と在庫は変わるので、最新の情報は販売ページで確認してください。
まず一式そろえるなら猫用の防災セットから
猫用に組まれた防災セットです。リュックはH40cm×W28cm×D14cm、素材はポリエステルと表記されています。
折畳トイレとスコップ、ウォータータンク5L2個、折畳ボウル2個、5年保存用の非常用保存水などが入ります。
環境省リストのガムテープとマジックにあたる、油性で書けるクラフトテープと油性マジックも同梱です。
販売ページの注意事項に「トイレ砂は同梱しておりません」「猫トイレは完全防水ではありませんのでご注意ください」と明記されています。
フードと薬も入っていません。環境省が優先順位1に挙げた5日分のフード・水・療法食・使い慣れた猫砂は、自分で足す前提で考えてください。
レビューは1件で、販売ページ上も総合評価の有効件数に達していないと表示されています。
避難所の居場所は折りたためるケージでつくれる
| 種類 | 楽天公式店の価格 | 使用時サイズ |
|---|---|---|
| ポータブルケージ | 6,280円 | 幅50.8cm 奥行81cm 高さ50.8cm |
| ケージとトイレのセット | 7,780円 | ケージとトイレの2点 |
| ポータブルキャリー | 4,080円 | 幅25cm 奥行46cm 高さ25cm |
| ポータブルライトキャリー | 3,028円 | 幅52cm 奥行40cm 高さ32cm |
| ポータブルトイレ | 2,148円 | 幅37.4cm 奥行27.5cm 高さ12.5cm |
| おちつくネット平型 | 1,068円 | 幅55cm 奥行0.5cm 高さ65cm |
| おちつくネット筒型 | 1,299円 | 平型よりスペースが広いタイプ |
ケージの体格目安は11kgまで。メーカーは大人の猫2匹、子猫なら3〜4匹が過ごせるサイズと説明しています。
脱走対策も入っています。開口部の片側は撥水布とメッシュ窓の二重構造で、内側から開けにくいファスナーです。
メーカー公式はケージの仕様に「ネームプレート付き」と記載しています。避難先で荷物に紛れないよう、識別できる情報を書いておきます。
おちつくネットは、洗濯ネットと同じ使い方を猫向けに設計した製品です。たたむと薄く、避難袋に入れておけます。
1ページに7種類が同居しているため、選ぶ種類で価格が1,068円から7,780円まで変わります。表示価格だけを見て注文しないでください。
原産国は中国。ケージは生活防水仕様で、完全防水ではありません。楽天公式店のレビューは19件です。
両手が空くリュック型キャリーなら荷物も持てる
ショルダー、手提げ、リュックの3通りで持てるキャリーです。避難では両手が空く形が効いてきます。
通常時は幅約45×奥行約26×高さ約28cm。開くと奥行が約104.5cmまで伸び、簡易ケージになります。
飛び出し防止リードが付き、長さは約23.5〜48cm。扉を開けた瞬間の脱走を止める役割です。
対応種は猫と小型犬、耐荷重は約8kg。販売ページには測定値であり保証値ではないと注記されています。
本体は洗濯できません。汚れは固く絞った布で拭き取り、中敷きだけ取り外して手洗いします。
猫の首輪は外れるタイプを選ぶ
迷子札が付いた猫用の首輪です。バックルは米デュラフレックス社製で、強い力が加わると外れます。
環境省が触れている「力が加わると外れるタイプ」がこれにあたります。ひっかかり事故を防ぐ設計です。
販売ページには「あくまで屋内用ですので、屋外用としての強度・耐性は不十分です。屋外用としてのご使用は危険ですので絶対にお止め下さい」と書かれています。
首輪は身元を示すためのもの。避難中に猫を保定する役目は、キャリーとハーネスに分けて考えてください。
消耗品でもあります。販売ページは6ヶ月から1年前後を目安に交換するよう案内しています。
いま使っている首輪には軽い迷子札を足せる
ステンレス製の猫用迷子札です。20mm×2.5mm×1mmで重さ2g、1円玉と同じ大きさと説明されています。
刻印はレーザー彫刻で、印刷ではありません。表に猫の名前、裏に飼い主名と電話番号を入れられます。
マイクロチップ装着済みを示す刻印も選べます。保護した人が読み取りを依頼する手がかりになります。
楽天のレビューは1,308件で総合評価4.88。今回の6点のなかでは最も件数が多い製品です。
オーダーメイド品のため、販売ページは土日祝を除く2〜4営業日以内の発送を目安としています。
台風が近づいてから注文しても間に合いません。刻印物はこういう性質なので、平時に頼んでおきます。
においを閉じ込める袋は多めに持っておこう
排泄物を入れて結ぶタイプの防臭袋です。ペット用のSSサイズが200枚入りで、公式ショップが販売しています。
猫砂の塊やペットシーツを1回分ずつ包めます。避難所ではにおいの苦情が実際に出ているため、枚数は多めに。
楽天のレビューは42件で総合評価4.88。犬猫共通のペット用で、猫専用の表記はありません。
よくある質問
- Q猫の同行避難と同伴避難は何が違いますか?
- A
同行避難は猫を連れて安全な場所まで避難する行動、同伴避難は避難先で飼い主が猫を飼養・管理している状態です。同行避難できても同じ空間で過ごせるとは限りません。
- Q避難所には猫を必ず連れて行けますか?
- A
受け入れの可否は自治体や避難所で異なります。能登半島地震では屋内同伴を不可とした市も、専用スペースを設けた市もありました。住んでいる自治体の窓口で先に確認してください。
- Q猫のフードと水はどのくらい備蓄すればいいですか?
- A
環境省のガイドラインは少なくとも5日分、できれば7日分以上としています。届く支援物資が普段のフードとは限りません。いつものものを多めに買い、古いものから使う形が続けやすいです。
- Qキャリーに入るのを嫌がる猫はどうすればいいですか?
- A
扉を外して部屋に置き、寝床のひとつにするところから始めます。中でごはんを与え、自分から入るようになったら短時間だけ閉める、持ち上げる、と段階を上げていきます。
- Q避難のときに洗濯ネットは本当に必要ですか?
- A
環境省の備蓄リストの優先順位3に入っており、猫の場合は屋外診療・保護の際に有用と説明されています。移動そのものに使う道具ではないので、ネットに入れてからキャリーへ運びます。
- Q猫にマイクロチップは義務ですか?
- A
動物愛護管理法により、ブリーダーやペットショップが販売前に装着・登録することが義務づけられています。団体や知人から譲り受けた場合は、装着と登録を行うことが推奨されています。
- Qマイクロチップを入れてあれば迷子札はいりませんか?
- A
環境省のリストは猫について両方を挙げています。チップは専用リーダーがないと読めませんが、迷子札は見つけた人がその場で連絡先を確認できます。登録と情報更新まで済ませてください。
- Q車の中で猫と過ごすときの注意点はありますか?
- A
環境省は車内の温度に常に注意し、十分な飲み水を用意するよう示しています。長時間離れる場合は安全な飼養場所へ移してください。飼い主側のエコノミークラス症候群にも注意が必要です。
まとめ:猫の防災はキャリーから始まる
- 同行避難は避難所までの行動、同伴避難は避難先での状態を指す
- 受け入れ方は自治体と避難所で分かれる。住んでいる地域を先に調べる
- キャリーとケージに慣らすことが、猫の防災でいちばん効く
- 猫の所有者明示は弱い。マイクロチップは登録と情報更新まで済ませる
- フードと水は5日分以上。猫砂は使い慣れたものを小分けで持ち出す
- キャリーの扉はガムテープで固定。洗濯ネットは診療と保護の場面で使う
猫の防災は、特別な訓練より日々の積み重ねです。キャリーを出しっぱなしにするだけでも一歩進みます。
防災の日の9月1日は見直しのきっかけになります。フードの残り、砂の予備、迷子札の連絡先を点検しましょう。
犬と暮らしている方は、犬向けの備えをまとめた記事もあわせてどうぞ。

※本記事は2026年8月時点の情報です。環境省の資料と各製品の販売ページを参照しました。最新の情報と地域のルールは自治体の窓口でご確認ください。
