犬の鑑札や注射済票をなくしたとき、飼い主さんが最初に決めるのは、どこへ申し込むかと、いくら用意するかの2つです。ところが再交付の手数料は札幌市が1,800円、横浜市が1,600円というように市区町村ごとに違っていて、受け付ける窓口の名前もそろっていません。
この記事では、札幌市・横浜市・静岡市・大阪市・松山市・斜里町の6市町について、鑑札と注射済票の再交付手数料・窓口・引っ越しのときの手続きを並べます。そのうえで、国が全国共通で決めていることと、市区町村が自由に決めてよいことの境目も整理しました。
この境目さえつかんでおけば、引っ越して市が変わっても手が止まりません。自分の市のページを開いたときに、どこを読めばいいかが先に決まるからです。
いま犬に着いている札から分かること
手続きを調べる前に、いま首輪に着いている札を見てみましょう。2枚の札は役割が違い、有効な期間も違うので、そこが分かるだけで、そもそも何かする必要があるのかの見当がつきます。
注射済票の色は3年でひとまわりする
注射済票の色は、市区町村が好きに選んでいるわけではありません。狂犬病予防法施行規則12条3項4号が、平成19年度を黄、平成20年度を赤、平成21年度を青とし、そのあとは順にこれを繰り返すと定めているからです。厚生労働省も同じ規則を、注射済票が満たすべき要件のひとつとして「色:22年度…黄、23年度…赤、24年度…青、以降繰り返し」と示しています。
つまり色は3年でひとまわりします。平成22年度(2010年度)が黄なので、3年おきの2013・2016・2019・2022・2025年度も黄。その次の2026年度(令和8年度)は赤、2027年度は青になります。
この決まりは、市区町村が独自の形やデザインを採用した場合にも外せません。ですから、色が今年度のものと違えば、その札は前の年度以前のものだと自分で判断できます。おうちにたまっている札を並べたときも、色の並びを追えば古い順に分けられますよ。
鑑札は生涯1枚、注射済票は毎年入れ替わる
2枚の札は、有効な期間がまったく違います。厚生労働省は、過去に交付された様式の札についても「過去に交付された様式のものであっても有効(鑑札については犬の生涯、注射済票に関しては当該接種年度内)なので、様式変更に伴っての交換は必要ありません。」としています。
ここから2つのことが分かります。ひとつは、市がデザインを新しくしても、古い鑑札をわざわざ交換しに行く必要はないということ。もうひとつは、鑑札はその犬が生きているあいだずっと使える一方で、注射済票は接種した年度のあいだだけ有効だということです。
札幌市でも、鑑札の交付は生涯1回、注射済票は毎年1回です。斜里町も、犬の登録は平成7年4月以降1回行えば生涯にわたって有効としています。年に1度、新しい注射済票が届いたら、前の年度の札は外して構いません。
見た目が市ごとに違うのは、様式が自由になったから
ほかの飼い主さんの写真を見て、自分の札と形が違って戸惑うことがあります。これは平成19年に決まりが変わったためで、厚生労働省は「以前は狂犬病予防法施行規則で全国統一の様式(デザイン)が決められていた鑑札、注射済票について、平成19年から以下の要件を満たす場合には各市区町村において自由に様式を決めることが出来るようにしました。」と説明しています。
実物で見ると差がよく分かります。静岡市の犬鑑札は直径2.5センチメートルの円形で、静岡名産のお茶をイメージしたカラー。注射済票のほうは縦1.6センチメートル、横2.7センチメートルの骨型です。隣の市の写真と自分の札が一致しなくても、それは間違いではありません。
| 決まっていること | 犬鑑札 | 注射済票 |
|---|---|---|
| 書かれる内容 | 「犬鑑札」の文字・登録番号・都道府県名・市町村名 | 「注射済」の文字・注射実施年度・都道府県名・市町村名 |
| 色 | 決まりなし(文字は識別しやすい色) | 3年周期で黄・赤・青 |
| 形と大きさ | 短径15mm以上の楕円か長方形 | 直径10mm以上の円か長方形 |
| デザイン | 市区町村長が決める | 市区町村長が決める |
表のとおり、内容と色と最低限の大きさは国が押さえていて、そこから先の見た目は市区町村に任されています。だから色と書かれている文字さえ確かめれば、形が違っても札としては同じ役割だと分かります。
札そのものの役割や、首輪・ハーネスへの着け方は別の記事でまとめています。

なくした札の再交付は市区町村の窓口で受け付ける
ここからは、札をなくしたり読めなくなったりしたときの手続きを見ていきます。申し込みの期限と持ち物には全国共通の決まりがあり、金額と窓口だけが市区町村で分かれる、という構造になっています。
鑑札は30日以内に申し込む決まりがある
意外と知られていませんが、鑑札の再交付には期限があります。狂犬病予防法施行規則6条1項は、鑑札をなくしたり傷めたりしたときは、その理由を書いて、傷めた場合はその鑑札を添えたうえで、30日以内に犬の所在地を管轄する市区町村長へ再交付を申請しなければならないと定めているからです。正当な理由があるときはこの限りではない、という但し書きも付いています。
もうひとつ、同じ条文の2項に見落としやすい決まりがあります。再交付を申し込んだあとになくした鑑札が出てきたときは、5日以内に市区町村長へ提出しなければなりません。古い札は捨てずに窓口へ持って行く、と覚えておくと確実です。
注射済票の再交付には動物病院の紙が要る
注射済票のほうは、必要なものが鑑札と違います。同じ規則の13条が、なくした理由を書き、注射済証を提示して申請することを求めているからです。傷めた場合には、その注射済票も添えます。
注射済証というのは、動物病院で注射を受けたときに獣医師から渡される紙のことです。金属の注射済票とは別物で、松山市もこの紙を持って窓口へ来るよう案内しています。注射済票をなくしたときは、まず動物病院の紙が手元にあるか探してください。
再交付を受け付けるのは市区町村の窓口だけです。札幌市は動物病院では再交付の手続きはできないとしており、大阪市も委託動物病院では鑑札と注射済票のどちらの再交付も行っていないと明記しています。登録や注射済票の交付ができる動物病院でも、再交付は扱っていないと考えておきましょう。
手数料の現金。金額は市区町村で違うので、自分の市の額を確かめてから出かけます。
割れたり読めなくなったりした札そのもの。紛失ではなく破損なら、現物を添えて申請します。
注射済票のときは動物病院の注射済証。鑑札のときは登録番号が分かるものがあると話が早く進みます。
手数料と窓口は市区町村で分かれる
ここが自分で調べるしかない部分です。6市町を並べると、金額を公開している市とそうでない市があり、窓口の呼び名もばらばらでした。
| 自治体 | 鑑札の再交付 | 注射済票の再交付 | 受け付ける窓口 |
|---|---|---|---|
| 札幌市 | 1,800円 | 400円 | 動物愛護管理センター・保健所・区役所健康・子ども課 |
| 横浜市 | 1,600円 | 340円 | 区福祉保健センター生活衛生課 |
| 静岡市 | 1,600円 | 340円 | 動物愛護センター・動物愛護第2係・蒲原支所 |
| 大阪市 | 1,600円 | 340円 | 区の保健福祉センター |
| 松山市 | 記載なし | 記載なし | 問い合わせ先は保健所生活衛生課 |
| 斜里町(北海道) | 記載なし | 記載なし | 問い合わせ先は環境課生活環境係 |
金額を出している4市のうち、札幌市だけが鑑札で200円、注射済票で60円ぶん高くなっています。札幌市はほかの手数料も同じ傾向で、登録が3,200円、注射済票の交付が700円。ほかの5市町はいずれも登録3,000円で、注射済票の交付は550円です。
松山市と斜里町は、犬の手続きのページに再交付の金額を載せていませんでした。金額が出ていない市町では、出かける前に電話で確かめておくと二度手間になりません。
窓口の呼び名も市によってまちまちです。横浜市は区福祉保健センター生活衛生課、大阪市は区の保健福祉センター、斜里町は役場2階6番の生活環境係。保健所や区役所という言葉だけを目印にすると、行った先で回されることがあります。
鑑札が外れて落ちないようにする工夫や、名前と連絡先を入れた札については別の記事で扱っています。

引っ越したら、新しい市の窓口だけで足りる
引っ越しのときにいちばん多い勘違いが、前の市と新しい市の両方へ行かなければならない、というものです。実際には片方だけで終わります。順番に見ていきましょう。
旧鑑札と引き換えに、新しい鑑札が出る
市区町村をまたいで引っ越すと、鑑札は新しい市のものに替わります。狂犬病予防法施行令2条の2第2項が、よその区域から自分の区域内へ犬の所在地を変えた届出があったときは、旧所在地の市区町村長が交付した鑑札と引き換えに鑑札を交付すると定めているからです。
これは全国共通の仕組みなので、どの市へ引っ越しても同じことが起きます。札幌市は市外から転入した場合について、旧住所地の市町村で交付された鑑札を持って届け出れば札幌市の鑑札と無料で交換すると案内しています。松山市も、転出のときは新しい市区町村で届け出て犬鑑札を交換するよう求めています。
届出そのものにも期限があります。狂犬病予防法4条4項により、犬の所在地を変えたときは30日以内に、新しい所在地を管轄する市区町村長へ届け出ることになっています。大阪市もこれにあわせて、引越しの日から30日以内という案内を出しています。
前の市では手続きをしない
引き換えの仕組みからも分かるとおり、届け先は新しい市だけです。札幌市は市内から市外へ移る場合について札幌市での手続きは必要ないとし、横浜市も横浜市での手続きは不要としています。松山市の案内も同じで、転出のときに松山市の窓口へ行く必要はありません。
| 自治体 | 転入したときにすること | 転出するときに前の市ですること |
|---|---|---|
| 札幌市 | 旧鑑札を持参し札幌市の鑑札と無料で交換 | 手続きは不要(鑑札を持参) |
| 横浜市 | 旧鑑札を持参し区福祉保健センターへ | 手続きは不要(鑑札を持参) |
| 静岡市 | 鑑札など登録の証明になるものを持参 | 記載なし(転出先の窓口で変更) |
| 大阪市 | 30日以内に区の保健福祉センターへ届出 | 記載なし(転出先で30日以内に変更) |
| 松山市 | 届出書と犬の鑑札を提出(オンライン可) | 手続きはなし(新市で鑑札を交換) |
| 斜里町(北海道) | 従前の市町村の鑑札を持参 | 記載なし(斜里町の鑑札を持参) |
右の列を縦に読むと、前の市ですることが6市町とも残っていません。手続きは不要と書く市と、転出先でしてくださいとだけ書く市に分かれるだけです。やることは実質、新しい市の窓口へ旧鑑札を持って行くことだけになります。荷造りのときに鑑札を段ボールへ入れてしまわないよう、財布やパスポートと同じ、すぐ取り出せる場所へ移しておくと安心ですよ。
引っ越しのついでに手放すケージやトイレの分け方は、こちらでまとめました。

鑑札が手元にないときの扱いは市で割れる
問題は、引き換えに出す鑑札が見当たらないときです。ここは6市町でもっとも扱いが分かれました。
横浜市は、鑑札を紛失している場合は鑑札再交付手数料1,600円がかかるとしています。大阪市も引っ越しの手続き自体は無料としたうえで、紛失などにより鑑札の再発行が必要な場合は再発行手数料1,600円が必要と書き分けています。この2市では、札をなくしたまま引っ越すと1,600円が上乗せされます。
一方、斜里町は鑑札を紛失した場合について、鑑札の代わりとなる証明書等を持参するよう求めており、金額には触れていません。静岡市も、コールセンターの案内では鑑札または狂犬病予防注射済票など登録の証明になるものを持参する形になっています。
その静岡市は、動物愛護センターの案内のほうでは転入前の自治体の鑑札を持参と書いており、2つの案内で持ち物の書き方がそろっていません。静岡市自身が登録状況によって手続き方法が変わるとして電話での問い合わせを先にすすめているので、札が手元にないときほど、窓口へ行く前に一度電話を入れるのが近道になります。
同じ市の中の引っ越しと、飼い主が変わったとき
同じ市の中で住所が変わった場合は、鑑札はそのまま使えます。市が変わらない以上、引き換える相手がいないからです。大阪市も、市内での引越しなら鑑札の持参は不要としています。
ただし届出は必要です。しかも窓口へ出向かずに済む市が多く、大阪市は窓口のほかに郵送・電話・行政オンラインシステムを受け付けています。静岡市は電話1本で完結し、札幌市も電話かファクス、郵送で対応。横浜市と松山市はオンラインの届出システムを用意しています。
犬を人から譲り受けたときの届出は、新しい飼い主が出します。狂犬病予防法4条5項が、所有者の変更があったときは新所有者が30日以内に届け出ることとしているからです。大阪市も、新たな所有者が犬の所在地を管轄する市町村へ所有者の変更を届け出る必要があると案内しています。
市の外から犬を譲り受けたときは、引っ越しと同じ流れになります。横浜市は市外からの転入と市外から犬を譲り受けた場合を同じ手続きとして扱い、前の飼い主が持っていた鑑札を持参するよう求めています。犬を迎えるときは、鑑札も一緒に受け取っておきましょう。
なお、マイクロチップを装着して国の指定登録機関に登録している場合は、市区町村の窓口での手続きが不要になることがあります。市によって扱いが違うので、登録の変更方法とあわせてこちらで確かめてください。

2027年3月2日から、注射済票の年度の付き方が変わる
もうひとつ、これから札に入る年度の表示に関わる変更が控えています。狂犬病予防法施行規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第73号)が2026年4月1日に公布され、2027年3月2日から施行されるためです。
変わるのは2点です。ひとつは、3月2日から3月31日までに受けた注射について翌年度の注射済票を交付するという現行の決まり(同規則12条5項)が廃止されること。もうひとつは、4月1日から6月30日までのあいだに受けさせるという時期の定め(同11条1項)がなくなり、通年で受けられるようになることです。
札の年度に影響が出るのは、毎年3月に注射を受けている場合です。松山市は、令和8年3月2日から3月31日までに接種した犬が令和9年3月2日から3月31日までに接種すると、2枚目の令和8年度の注射済票が交付されると説明しています。同じ年度の色の札を2枚持つことになる、ということです。
時期の定めがなくなっても、注射を受けさせる回数が毎年1回である点は変わりません。手続きの上で気をつけるのは、3月に受けたときの札の年度表示だけです。3月の接種が習慣になっているご家庭は、2027年の春に届く札の年度を一度確かめておくと迷いません。
よくある質問
本文で触れきれなかった、札を着ける場所と、引っ越しで番号がどうなるかの2点を補っておきます。
- Q注射済票は、鑑札と同じ場所に着けないといけませんか?
- A
同じ場所でなくても構いません。狂犬病予防法施行規則12条3項1号は、注射済票の条件として、首輪・胴輪・鑑札その他その犬が着用するものに付着させられることを挙げています。条文が着ける先として鑑札を挙げているので、注射済票を鑑札に重ねて留める形も認められています。
鑑札のほうは同5条1項1号で、首輪・胴輪その他その犬が着用するものに付着させられることが条件です。どちらも犬が身に着けるものに付いていればよいので、留め方そのものは自由に選べます。
- Q引っ越すと、鑑札に書かれた登録番号は変わりますか?
- A
市区町村をまたぐ引っ越しなら、番号は変わると考えてください。狂犬病予防法施行規則5条1項2号が、鑑札に登録番号と市町村の名称を特定できる文字や数字を書くことを求めているためで、新しい市の鑑札には新しい市の番号が入ります。前の市の原簿も、新しい市へ送られる仕組みです(同施行令2条の2第3項)。
ペットホテルの申込書などに登録番号を書く機会があるので、引っ越しのあとは番号を控え直しておくと安心です。同じ市の中の引っ越しでは鑑札が替わらないので、番号も変わりません。
鑑札と注射済票の手続きがややこしく見えるのは、国が決めている部分と市区町村が決めている部分が混ざって説明されているからです。期限と持ち物は全国共通、金額と窓口は自分の市。この2つに分けて読めば、次にどこへ問い合わせればいいかがすぐ決まりますよ。
※参考: 以下はいずれも2026年9月7日に確認しました。条文は e-Gov法令検索の狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)4条・5条、狂犬病予防法施行令(昭和28年政令第236号)2条の2、狂犬病予防法施行規則(昭和25年厚生省令第52号)5条・6条・11条・12条・13条、および2027年3月2日施行の改正後の同規則(令和8年厚生労働省令第73号による改正)によります。札の様式と有効期間についての記述は厚生労働省「犬の鑑札、注射済票について」、各市町の手数料・窓口・引っ越し時の手続きは、札幌市「犬の登録と狂犬病予防注射」、横浜市「犬の登録と狂犬病予防注射の手続き」、静岡市「わんちゃんには鑑札と注射済票を着けましょう!」「飼い犬の登録」「狂犬病予防注射」および同市コールセンターの回答、大阪市「飼い犬の登録に関する手続き一覧」「引越しに伴う飼い犬登録の手続き」「狂犬病予防注射」、松山市「犬の登録と狂犬病予防注射」「犬の所在地・所有者等が変わったとき、犬が死亡したときの手続き」「狂犬病予防注射の制度が変わります」、斜里町「畜犬登録」「狂犬病予防注射」によります。
