棚の奥から出てきたキャットフードの袋に、少し前の日付が印刷されていました。何日過ぎたら駄目なのかを調べると、出てくる数字がサイトごとに違います。未開封で何年、開封後は何か月という目安も、そろっていません。
数字がそろわない理由のほうは、出どころを当たると分かりました。ペットフード安全法について国がまとめている質問集には、賞味期限が何年もつという目安がひとつも書かれていません。載っているのは期限の決め方だけで、しかもその決め方は会社ごとに選べるようになっています。
そしてもうひとつ。袋に刷られた日付には、はっきりした前提条件が付いていました。まずその条件から見ていきます。
その日付は、未開封の袋にしか付いていません
袋の日付について、質問集にはこう書かれていました。「製造業者等により表示された賞味期限は、適正に保管された未開封の製品について設定されたものです。」
適正に保管された、未開封の製品について。袋を開けたところで、印刷されている日付は前提のほうを失います。開けたあとのことまで含めて決められた日付ではなかった、ということです。
店の側についても、続けてこう書かれていました。「販売業者等において、販売用ペットフードの容器包装の開封等を行い、当該販売用ペットフードの賞味期限を変更する必要がある場合は、当該販売業者等が適切に対応する必要があります。」
量り売りのように店が袋を開けて売る場合は、期限を決め直すのは店のほうになります。開封したあとの期限について、質問集が対応を求めている相手は売る側です。
開けたあとの保存をどうするかは、猫用フードストッカーを選ぶときに考えたことと地続きです。日付を見るより先に、どう保管してきたかのほうが効いてきます。
賞味期限は「決められた方法で保存した場合」の期限です
そもそも賞味期限とは何か。質問集の定義はこうです。「賞味期限とは、製品ごとに定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限のことです。」
ここにも条件が入っています。製品ごとに定められた方法により保存した場合において、です。袋に書かれた保存方法から外れた置き方をしていれば、その日付が指していた状態とは別のものになります。
直射日光の当たる場所に置いていた袋と、暗い棚に入れていた袋で、同じ日付が同じことを保証しているわけではない、ということです。
何年もつかは、この資料のどこにも書かれていません
では何年もつのか。質問集を最後まで読みましたが、年数や月数の目安は一度も出てきませんでした。「賞味期限」という語は何度も出てくるのに、その長さを示す数字は一か所もありません。
代わりに書かれているのは、決め方のほうです。「賞味期限は、科学的、合理的根拠に基づき設定する必要があり」、次のいずれかの方法で確認する、という形になっています。
| 方法 | 書かれている内容 |
|---|---|
| 保存試験 | 自社あるいは外部機関による保存試験等の結果 |
| 外部機関の試験 | 外部機関等による賞味期限設定のための試験結果 |
| 似た製品を参考にする | 同様の原材料及び製法である製品の賞味期限を参考としている場合は、参考としている製品の規格(加工工程を含む)と当該製品との比較 |
| その他 | その他、科学的・合理的根拠に基づく方法 |
この中から選べるようになっているので、同じような製品でも会社によって決め方が違います。そして質問集が示しているのは、この決め方までです。年数そのものは示していません。
検索で出てくる年数がどこから来ているのかは、この記事では追っていません。言えるのはこの資料から出た数字ではないということと、手元の製品の数字はその袋の表示で確かめる、というところまでです。
期限を過ぎると、何が進むと書かれているか
質問集には「賞味期限を過ぎたペットフードを販売してもよいですか」という設問があり、その答えのなかで何が起きるかに触れていました。「賞味期限を過ぎたペットフードは、直ちに健康影響を引き起こすわけではありませんが、ペットフード中の油脂の酸化、栄養成分の減衰などが進み、ペットへの健康影響が生じる可能性が否定できません。」
この答えは事業者に向けて書かれたものです。続きは「このため、事業者にあっては、賞味期限内に販売することが望まれます。」で、飼い主が手元の袋をどうすべきかについては書かれていません。
読み取れるのは何が進むのかまでです。油脂の酸化と、栄養成分の減衰。猫に与えてよいかどうかの判断は、この資料からは出てきません。
原材料や添加物の書かれ方についてはキャットフードの原材料表示で扱いました。酸化防止剤が使われているかどうかも、そちらで書いた読み方で袋から分かります。
日付の並びは「年月日」とは限りません
ここからは、袋を実際に見るときの話です。日付の並びについて質問集はこう答えていました。「日月年」あるいは「月年」のような表示も可能です。
日・月・年の順もあり得るということです。ただし書きも付いています。「ただし、消費者に誤解のないよう、この表示された数字の年月がわかる説明が必要です。」
輸入品についての設問もありました。「賞味期限が英語表記の場合には、消費者に誤解のないよう日本語で説明を表示してください。」質問のほうには、パッケージ下部の英語表記の例として「best by 15 NOV 14」のような書き方が挙がっています。
| 見え方 | 読み方として挙がっているもの |
|---|---|
| 数字だけが並んでいる | 日・月・年の順や、月・年の順もあり得る |
| 英語が混じっている | アルファベットの表記(JANなら1月、FEBなら2月) |
| どこに書いてあるか分からない | パッケージ下部に記載、という表示の仕方もある |
読み違えると、期限内の袋を捨てることにも、逆のことにもなります。数字の並びに迷ったら、袋のどこかに付いている日本語の説明を探すことになります。
外側の袋を開けただけでも、影響することがあります
外側の大袋のなかに小分けの袋が入っている製品についても、設問がありました。「外包材の保護機能(遮蔽性、遮光性)がなくなることによって賞味期限に影響がある場合については、当該販売業者が適切に対応する必要があります。」
遮蔽性と遮光性。外袋が光や空気を遮っていたぶんが無くなるので、小分けの袋をそのまま置いておく期間は、外袋ごと置いてあったときと同じではありません。
消費期限が書かれていない袋がふつうです
袋に賞味期限しか印刷されていないことがありますが、それがふつうの形です。質問集にはこうありました。「賞味期限を記載した上で、任意で製造年月日や消費期限を記載することは差し支えありません。」
消費期限は任意なので、書かれていないのが省略というわけではありません。はじめから義務になっていないだけです。
よくある質問
- Q賞味期限が切れたキャットフードは、猫にあげてもいいですか?
- A
この記事では判断しません。農林水産省の質問集で読み取れるのは「賞味期限を過ぎたペットフードは、直ちに健康影響を引き起こすわけではありませんが、ペットフード中の油脂の酸化、栄養成分の減衰などが進み、ペットへの健康影響が生じる可能性が否定できません」というところまでで、しかもこれは事業者に向けて書かれた答えです。手元の袋をどうするかは、製造元が出している案内を見たうえで決めることになります。食べるかどうかで迷ったときは、かかりつけの動物病院にご相談ください。
- Q未開封なら、期限を過ぎても大丈夫ですか?
- A
未開封かどうかは、袋の日付が成り立つための前提条件のほうです。質問集には「製造業者等により表示された賞味期限は、適正に保管された未開封の製品について設定されたものです」とあります。つまり未開封は、期限を延ばす理由ではなく、その日付がそもそも何について決められたかという話になります。期限を過ぎたあとのことは、この資料には書かれていません。
- Q開封後はどれくらいもちますか?
- A
農林水産省の質問集には、開封後の期間について書かれていません。書かれているのは、袋の日付が未開封の製品について設定されたものだということと、店が袋を開けて売る場合は販売業者が期限の変更に対応する必要がある、ということまでです。開封後の目安は製品ごとに違うので、袋に刷られている保存方法のほうを見ることになります。
- Qキャットフードの賞味期限は、だいたい何年ですか?
- A
この資料にはその数字がありません。質問集が示しているのは決め方のほうで、保存試験の結果、外部機関の試験結果、似た製品との比較、その他の科学的・合理的根拠に基づく方法、という選択肢が挙がっています。選べるようになっているため、会社や製品によって決め方が違います。手元の製品の数字は、その袋の表示を見ることになります。
- Q袋の数字が「15 11 24」のように並んでいて、読み方が分かりません
- A
並びは年月日とは限りません。質問集には、日・月・年の順や、月・年の順もあり得ると書かれていて、あわせて「ただし、消費者に誤解のないよう、この表示された数字の年月がわかる説明が必要です」とされています。つまり、どの数字が何を指すかの説明が袋のどこかに付いているはずなので、そちらを先に探すことになります。
- Q大袋の中の小分けパックは、外袋を開けたあともそのままで大丈夫ですか?
- A
質問集には「外包材の保護機能(遮蔽性、遮光性)がなくなることによって賞味期限に影響がある場合については、当該販売業者が適切に対応する必要があります」とあります。外袋が担っていた光や空気を遮る働きが無くなる、という考え方です。家庭で保管する場合も、小分けの袋だけで置いておく期間は外袋ごと置いてあったときと同じではない、という読み方になります。
なお、ここで読んだのは農林水産省が公開している「ペットフード安全法に関するQ&A」です。出典:農林水産省ウェブサイト(https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/)。当社が試験や分析で確かめたものではなく、公開されている資料を読んだだけです。
制度は改正されることがあります。また、個別の製品の賞味期限や保存方法は袋ごとに違います。お使いの製品については、パッケージの表示と製造元の案内を確かめてください。猫の体調や食事に関わる判断は、かかりつけの動物病院にご相談ください。
