キッチンに入らせない方法を探していると、柵、パーテーション、カーテン、カウンターの上に置く物まで、いくらでも案が出てきます。どれから手をつけるか決めかねているうちに、今日も猫は天板に乗っている。
ところが、公的機関が10年ぶん集めた記録を開くと、猫の事故でいちばん多いのは「入ったこと」そのものではありませんでした。こんろの操作ボタンやスイッチを押したことが、猫の事故35件のうち20件を占めていました。
入らせない工夫には時間もお金もかかります。その前に、押されても火がつかない状態を作るほうが先です。何が記録されていて、どの順番で手を打てばいいのかを並べていきます。
猫の事故でいちばん多いのは「こんろのスイッチ」
製品評価技術基盤機構(NITE)は2024年3月、ペットによる火災事故について注意喚起を出しました。2013年度からの10年間に通知されたペットによる事故は61件、うち54件が火災に至っています。ペット別では猫がいちばん多く35件で、そのうち32件が火災でした。
猫35件を行動で分けると、こんろの操作ボタンやスイッチを押した20件(57%)、高いところにあった電気製品に排尿した14件(40%)、暖房器具を倒した1件(3%)という並びになります。また、製品別に見ても同じ場所が浮かび上がります。
| 製品 | 件数 |
|---|---|
| ガスこんろ | 23件 |
| 配線器具(延長コード・タップ等) | 8件 |
| IHこんろ・電気こんろ | 5件 |
| 石油・ガス・電気のストーブ | 5件 |
| ペット用ヒーター | 3件 |
| 太陽光発電用パワーコンディショナー | 3件 |
| プリンター・ファクシミリ | 3件 |
ガスこんろは単独で23件と、製品別でいちばん多く記録されています。IHこんろ・電気こんろの5件も同じキッチンの製品です。猫が立ち入る場所のなかで、記録がいちばん厚いのがここだということになります。
ただ、この61件は製品事故として通知されたものの集計であって、ペットが関係した火災の全体ではありません。ここに出ていない製品が安全だという読み方はできない数字です。それでも、こんろが突出していることは記録から言えます。
IHにしても起きている
火が見えないぶんIHのほうが安心だと考えたくなります。ところがNITEが挙げている事例のひとつは、まさにそのIHこんろでした。2014年8月、大阪府。飼い主の外出中に「室内で飼っていた猫がスイッチを押したことにより、トッププレート上の金属製ボウルがIHヒーターにより加熱され、接触していた可燃物が出火したもの」と推定されています。
NITEはこの事故の再現実験の映像まで公開しています。解説には「ペットがIHこんろの上に登るなどしてスイッチを押してしまうことがあります」とあり、続けて「IHこんろの場合は金属製の鍋やボウルなどもトッププレート上に放置しないようにしてください。誤ってスイッチが入った場合に加熱されるおそれがあります」と書かれています。
つまりIHで変わるのは、火が出るかどうかではなく何が熱くなるかのほうです。そのため、天板に水切りかごや鍋、ボウルを置いたままにしていると、スイッチが入ったときにそれが熱源になります。平らで広い天板は猫にとって乗りやすい場所でもあるので、置き場所としては分が悪いままです。
やることは3つ、順番があります
NITEが挙げている対策のうち、こんろに関わるのは次の3つです。どれも買い物をせずに今日できます。
1つめは、出かける前に止めること。「出掛ける際はガスこんろの元栓を閉め、IHこんろ・電気こんろは主電源を切る」。出かける前のひと手間で終わる部分です。
2つめは、ロックをかけること。「操作ボタンをロックする機能がある場合は使用する」。呼び名はメーカーによって違うので、手元の取扱説明書で探すことになります。実際、事故の記録には「ガスこんろの操作ボタンはロックがかかっておらず」と書かれた事例があります。機能が付いていても、使っていなければ記録には同じように残ります。
3つめは、周りに物を置かないこと。同じ事例では「左右こんろの間には犬の餌が入った樹脂製容器が置かれていた」とあります。ペットの興味を引く物がこんろの上や周りにあると、そこへ行く理由ができてしまいます。IHなら金属製の鍋やボウル、ガスなら燃える物を、天板から下ろしておきましょう。
キッチンの家電の上も、同じ記録に出てきます
猫35件のうち、2番目に多かったのが排尿による事故で14件でした。NITEは「猫はIHこんろや太陽光発電用パワーコンディショナー、プリンター等の高い位置にある製品に飛び乗って事故を発生させる傾向があり、猫の高い身体能力も事故に関係していると考えられます」と書いています。
なお、キッチンには炊飯器も電子レンジもトースターもあります。どれも天板やカウンターの上、つまり猫が乗れる高さに置かれがちです。尿が内部に入ると、電気部品でトラッキング現象が起きて発火することがある、というのが記録されている筋道です。このうち炊飯器については、蒸気口の温度を公的機関が測った数字が出ています。
対策として挙がっているのは「ペットが好む排尿場所等に配線器具や電気製品を置かないようにしましょう」で、そこに「特に猫は、高い位置にある製品でも飛び乗ることができるため、注意してください」と添えられています。高いところに逃がす方法が、猫には通じないということです。
入らせない工夫は、その次に考える
ここまでを済ませたうえで、キッチンそのものに入らせない方法を考えることになります。NITEも対策の一つとして「目を離す際や出かける際は、ペットをケージに入れる」を挙げています。犬や猫は行動範囲が広いので、出かけるあいだだけでも区切るという考え方です。
ただ、柵やゲートで区切る方法には注意が要ります。ベビーゲートは子ども向けの製品なので、高さも固定のしかたも猫に合わせて作られているわけではありません。選び方は別の記事にまとめました。

なお、同じ「スイッチとロック」の話は暖房器具にもあります。冬にストーブを出すなら、こんろと合わせて見ておくと一度で済みます。

今日のうちに決められること
キッチンの対策は、道具を買うところから始めると終わりが見えません。記録に残っている順にたどると、やることは短くなります。
まず、出かける前にガスなら元栓、IHや電気なら主電源を切る。次に、取扱説明書を開いて操作ボタンのロックを探し、かけ方を覚える。そして、天板と周りから金属のボウルとペットの食べ物を下ろす。ここまでが、買い物のいらない部分です。
柵やパーテーションは、そのうえで足すものとして考えると選びやすくなります。順番を逆にすると、柵を買ったのにこんろのロックは一度もかけていない、という形になりかねません。
よくある質問
- QIHなら火が出ないので安心ではないですか?
- A
NITEには、猫がIHこんろのスイッチを押し、天板に置かれていた金属製ボウルが加熱されて出火した事例が記録されています。再現実験の映像も公開されています。IHでも、天板に物を置いたままにしないことと、主電源を切ることは必要です。
- Qにおいで寄せつけない方法だけでもいいですか?
- A
NITEが挙げている対策は、元栓を閉める、主電源を切る、ロックをかける、物を置かないという物理的なものです。においを使う方法を足すとしても、火がつかない状態を作る側を先に済ませておきましょう。
- Q猫がキッチンに乗るのをやめさせることはできますか?
- A
行動の相談は、猫の年齢や暮らし方によって答えが変わります。かかりつけの動物病院や、猫の行動に詳しい獣医師に相談してください。この記事で扱っているのは、乗られても事故にならない状態の作り方です。
