猫は、暖かくなる場所をよく知っています。パンを焼いているあいだだけ台所に来る、という猫もいます。
東京都が、オーブントースター3機種の温度を17か所で測っています。その結果、本体でいちばん熱かったのは、猫が乗る天板ではなく前面扉でした。150℃を超えた製品もあります。
上に乗ることだけを気にしていると、見る場所がずれてしまいます。同じ調査では3機種の取扱説明書も調べられていて、そのうち1機種には動物のことまで書かれていました。順に見ていきます。
本体でいちばん熱かったのは、前面扉でした
試験は、3機種を最大出力で30分加熱し、そのあと30分は扉を開けずに温度の変化を追う形で行われました。測った場所は17か所あって、天板面、本体の上の空間、左右の側面、前面扉、裏面、底面、焼き網、ヒーター、そして食品まで含まれています。
庫内をのぞいた本体部分で最も温度が高かったのは前面扉で、150℃以上になる製品がありました。温度の低い製品でも100℃を超えていました。ヒーター部分はさらに高く、700℃を超える製品もあります。
猫が乗るのは天板ですが、においをかぎに来たときに顔が近づくのは扉のほうです。なお、天板が何度だったかという数字そのものは示されていません。各測定点の結果はグラフで載っているだけなので、はっきりしているのは前面扉より高くはなかったことだけです。
タイマーが切れたあとも、熱は残ります
各製品とも、タイマーが切れてから温度が下がるまでに時間がかかっていました。「タイマー切断5分後でも庫内のヒーター部分は150℃前後、加熱された食品は100℃以上、焼き網は100℃近くあった」と記録されています。
パンを取り出して人が台所を離れたあとが、猫にとっては近づきやすい時間です。同じことはスチームクリーナーで調べたときにも出てきました。使っている最中より、使い終わったあとのほうが見落とされます。
説明書が止めているのは、物を置くことです
取扱説明書には、「本体の上に物を載せたり、本体の下のすき間に物を入れて使用」しないという項目があります。ただし理由は重さではありません。本体やそのすぐ近くは高温になることがあり、燃えやすい物が本体に接触していると出火するおそれがあるからです。
つまり火災の話です。冷蔵庫の天面には置き場としての名前が付いていて、条件つきで物をのせることが認められていました。トースターは反対で、上は空けておく前提で作られています。
アンケートでは、この使い方をした経験があると答えた人が14.8%、危険と知らなかったと答えた人が18.3%いました。20代にかぎると、行った経験があるのは24.5%です。取扱説明書や本体の注意表示を全部読んだ人は18.4%しかいないので、知らないまま物をのせていても無理はありません。
上にどれだけ空けるかは、製品ごとに違います
オーブントースターには「離隔距離」という決まりがあります。報告書の定義では、「離隔距離とは、安全性の観点から設定されているオーブントースターの周り(上・横・後ろ)において空けておく必要のある距離(スペース)のこと」です。猫が乗る天板の上は、まさにその「上」にあたります。
ところが、この距離を言える人は多くありませんでした。「知っているが、その距離はよくわからない」が44.6%、「知らない」が34.0%です。庫内の清掃を一度もしていないと答えた人では、知らない割合が約7割にのぼっていました。
調査では「製品の上にキッチン用品を置いたり、背面が棚に接している状態で設置している例が確認できた」とも書かれています。猫がのぼれる場所は、人にとっても物を置きやすい場所です。何センチ空けるかは製品ごとに違うので、お使いの説明書で確かめるのが早いです。
動物のことが書かれていたのは、3機種のうち1機種でした
3機種の取扱説明書を並べた表のうち、動物に触れていたのは1機種だけです。ノーマルタイプの検体1の指示欄に、「調理中は煙やにおいに敏感な小鳥などの小動物は別の部屋に移し、窓を開けるか換気扇を回す」と書かれていました。
ここで言われているのは煙とにおいであって、熱ではありません。残り2機種の欄は空白で、動物についての記載はありませんでした。冷蔵庫を調べたときは、どの説明書にもペットのことが書かれていなかったので、1機種でも書いてあるのは珍しいほうです。
ただし、この調査は猫が乗ることを想定したものではありません。測られたのは温度と発火であって、動物が天板に乗ったときに何が起きるかは試験されていません。本体の重さは軽いもので約4.0kg、重いもので約5.7kgと、猫とそれほど変わらない数字でした。
魚を焼く日は、火のほうにも目を向けておく
もうひとつ、火のほうの試験もあります。温度がいちばん高かった検体1で、切り餅、バターを塗った食パン、生魚の3つを焼いた結果が出ていました。
| 焼いたもの | 起きたこと |
|---|---|
| 切り餅 | 発煙あり。膨らんだがヒーターには接触せず、発火はなし |
| 食パン(バターを塗ったもの) | ヒーター部に油分が落ちた際の発火を観測 |
| 生魚 | 油分がヒーターに多量に落ち、庫内で発火が頻繁にみられた |
魚を焼けば猫は寄ってきます。そしてその日が、いちばん火の出やすい日でもあります。説明書の指示は、スチームタイプの検体3に「バター、ジャム、チーズ、肉、魚、フライなど油分を含むものや焼きアミから落ちやすいものは必ず耐熱皿を敷いて調理する」とありました。耐熱皿を敷けば、油がヒーターに落ちる道が1つ減ります。
くず受けトレーの食べかすも同じです。においが残っていれば猫を呼びますし、可燃物が残っていた場合には火災に至る危険性があることが確認されています。
今日のうちにできること
まず、トースターの上に何かのっていないかを見ます。食パンの袋、ふきん、ラップの箱あたりが置かれやすい場所です。猫が乗る前に、そこが「空けておく場所」だと決めておくほうが早く済みます。
次に、焼いたあとの置き場を決めます。扉を閉めたまま冷ますあいだ、台所に猫が入らないようにできれば一番ですが、難しければ焼き網とトレーを出しっぱなしにしないだけでも違います。
台所の家電としては、こんろのスイッチのほうが事故の記録は多く残っています。トースターはその次に見る場所です。
よくある質問
- Q猫がトースターの上に乗ってしまいました。本体は壊れますか?
- A
東京都の試験で測られたのは温度と発火で、猫が乗ったときに何が起きるかは調べられていません。説明書が上に物を置くことを止めているのは、高温になる部分に燃えやすい物が触れて出火するおそれがあるからです。本体の重さは約4.0kgから5.7kgで、猫とそれほど変わりません。気になるときは、品番を伝えてメーカーの相談窓口で聞くのが確実です。
- Q使い終わってすぐなら、猫が近づいても大丈夫ですか?
- A
タイマーが切れて5分後でも、庫内のヒーター部分は150℃前後、焼き網は100℃近くありました。本体でいちばん高い前面扉も、使用中は100℃以上になっています。冷めるまでは扉を開けず、猫が入れない状態にしておくほうが安心です。
- Qトースターのコードが短くて、延長コードを使っています
- A
調査では、テーブルタップや延長コードを使うことを危険と知らなかった人が約3割いました。ほかの器具と一緒に使うと、分岐の部分が異常に発熱して発火するおそれがあります。測られた3機種のコードは約1.0mから1.2mでした。コードまわりは配線のほうで別に書いています。
まとめ
乗られて心配になるのは天板ですが、17か所を測った結果でいちばん高かったのは前面扉のほうでした。猫がにおいをかぎに来る高さなので、そこを基準に考えると早いです。
説明書が上に物を置くことを止めているのも、重さではなく出火のためです。上に空けておく距離も製品ごとに決まっていますが、それが何センチかを答えられた人は少数でした。
魚を焼いた再現試験では、庫内で発火が頻繁に起きていました。猫が台所に来る日とちょうど重なるので、耐熱皿を敷くことと、焼いたあとに扉を閉めたまま冷ますことの2つから始めてみてください。
