テレビの裏、パソコンの足もと、充電器のケーブル。猫のいる家で、コードは必ずどこかに出ています。噛まれた跡を見つけて、カバーを探しはじめた人も多いはずです。
ところが、NITEがペットの火災について出している資料には、コードカバーという言葉が一度も出てきません。挙がっている対策は電源プラグをコンセントから抜くことと、置き場所を変えることの二つです。しかも、猫の場合は噛む以外にもう一つの入口があります。
何が記録されていて、カバーはどこまで届くのか。火が出るまでの道筋から順に見ていきます。
公的機関が挙げている対策は、カバーではない
製品評価技術基盤機構(NITE)は、ペットを部屋で放し飼いにするときの注意を再現映像つきで公開しています。その解説にはこうあります。「ペットが電源コードをかじってしまうと、コードの断線によりショートして発火するおそれがあります」。
そして対策として書かれているのが「電気製品に乗らないようにしたり、電源プラグをコンセントから抜いたりして、事故を防ぐ対策をしてください」です。使っていない機器なら、そもそも「プラグを抜いて、ペットの行動範囲外に保管する」ことができます。
記録のうえでも、配線まわりは上位に来ます。NITEに通知されたペットによる事故61件を製品別に見ると、配線器具(延長コードやテーブルタップなど)が8件で、23件のガスこんろに次ぐ多さでした。8件のうち猫が関係したのは5件で、5件とも火災になっています。ただしこの61件は、製品事故として通知されたものの集計です。ペットが関係した火災は、これより広い範囲にあると考えておいてください。
噛む以外に、もう一つの入口がある
猫による事故35件のうち、高いところにあった電気製品に排尿したものが14件(40%)を占めます。同じ映像の解説にも「ペットが電気製品の上に乗った際におしっこをしてしまうと、おしっこが製品内部に入って発煙・発火してしまうおそれがあります」とあります。
このとき起きているのがトラッキング現象です。NITEの資料には進み方が図で示されていて、一度で火が出るわけではありません。「液体の乾燥や再付着を経て、火花放電を繰り返し、少しずつ炭化範囲が広がっていき」と説明されています。
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| 1 | 尿などの液体が付き、配線のあいだで小さな火花が出る |
| 2 | その火花で、配線を隔てている部分が少し炭になる |
| 3 | 乾く・また濡れるを繰り返し、炭の範囲が広がる |
| 4 | 炭がつながって配線がショートし、発火する |
つまり、拭いたから終わり、ではありません。同じ場所で繰り返されるほど進んでいく形です。だからNITEの対策も「ペットが好む排尿場所等に配線器具や電気製品を置かないようにしましょう」と、場所の側を変える言い方になっています。
そこには「特に猫は、高い位置にある製品でも飛び乗ることができるため、注意してください」とも添えられています。棚の上に逃がす方法は、猫には通じないということです。
カバーが届くところと、届かないところ
コードカバーが無駄だという話ではありません。噛まれて被覆が傷むことに対しては、物理的な層が増えます。ただ、それで消えるのは経路のひとつだけです。
トラッキング現象が起きるのは、電気製品の内部や差込口のあたりです。コードに巻いたカバーは、そこまでは届きません。また、カバーの硬さや厚みがどこまで持つかは製品によって違います。かじられない保証として数えるより、層がひとつ増えたものとして見ておくほうが安全です。
そのうえで、確実に言えることが一つあります。電気が通っていないコードは、かじられても発火しません。プラグを抜くというNITEの対策が最初に来るのは、ここが理由です。カバーは、抜けない機器のために足すものとして考えると位置づけがはっきりします。

抜けるもの、抜けないもので分ける
家じゅうのコードを一度に片づけようとすると終わりません。抜けるかどうかで分けると、作業が短くなります。
抜けるものは、使っていないときに抜きます。充電器、ドライヤー、季節外の家電、来客のときだけ使う機器。差したままになっている理由がとくに無いものから外していきます。
なかでも充電中の機器は先に片づけたいところです。NITEには「リチウムイオンバッテリー搭載製品」として3件が記録されていて、資料に載っている事例は犬のものになります。「室内で飼っていた犬が、床の上で充電されていたモバイルWi-Fiルーターにかみつき、製品を変形させたためショートして、事故に至った」と推定されています。床に置いたまま充電する形は、かじる相手がいる家では弱いところです。
抜けないものは、冷蔵庫やルーターのように止められない機器です。こちらは置き場所で対応します。猫が通る動線から外す、家具の裏を通す、猫が粗相をする場所の近くには置かない。カバーを足すなら、この残ったところに使います。
なお、キッチンは配線と熱源が同じ場所に集まるので、別に見ておくと早く片づきます。

今日のうちにできること
まず、部屋を一周して差しっぱなしのプラグを数えるところから始まります。使っていないものを抜くだけで、かじられても火が出ない状態になります。
次に、猫が粗相をしたことのある場所を思い出してください。その近くに電気製品やタップがあれば動かします。場所を変えられないなら、せめて床への直置きをやめるところからで十分です。床に這わせたままのコードは、ロボット掃除機を使っている家では別の問題にもなります。
カバーを買うのは、ここまでやって残ったコードの本数を数えてからで間に合います。先に買うと、本当に必要な場所と数が分からないまま選ぶことになりがちです。
よくある質問
- Q猫がコードを噛んでいるのを見つけたら、どうすればいいですか?
- A
やめさせることより先に、そのコードのプラグを抜いてください。電気が通っていなければ、同じことをされても発火にはつながりません。噛む行動そのものの相談は、かかりつけの動物病院へどうぞ。
- Q100円ショップのコードカバーでもいいですか?
- A
製品ごとの持ちは実際に試していないので、こちらからは比べられません。ただ、値段にかかわらずカバーで変わるのは噛まれたときの話だけです。抜ける機器を抜くほうが先に効きます。
- Q猫が感電したかもしれないときは?
- A
見た目に変わりがなくても、動物病院に連絡して指示を受けてください。口の中の傷や、時間が経ってから出る症状は家庭では判断できません。先にブレーカーか元のプラグを切ってから近づきましょう。
