ゴキブリが出た部屋に猫がいる。この順番で困ると、薬を買う前に手が止まります。置いていいのか、置くなら猫がいない場所なのか、そもそも猫が先に見つけてしまうのではないか。
アース製薬は自社サイトの質問集で、ゴキブリ用の薬それぞれについて猫のことを書いています。ところが読み比べると、書き方の強さがそろっていません。「お使いいただけます」と言い切るものもあれば、「影響はないと思われます」で止めるものもあります。
この記事では、置き型の毒餌・ホウ酸ダンゴ・粘着シート・電気式・くん煙剤というタイプごとに、メーカーが猫について何を書いたかを並べました。置き型の毒餌については、ゴキブリがどこで死ぬかまで答えが出ています。
置き型の薬を食べたゴキブリは、容器の中では死にません
先に、いちばん意外なところから書きます。「ブラックキャップ」を置くとゴキブリは容器の中で死ぬのか、という質問への答えです。
「ゴキブリは容器に頭を入れ、中のエサを食べて死にます。」ここまでは置いた目的のとおり。続きがこうなっています。「死ぬまでに最低でも数時間かかりますので、容器の中で死ぬことはありません。」
エサを食べたゴキブリは、歩いて容器から離れます。どこで動かなくなるかは、置いた人には分かりません。猫がいる家では、ここが効いてきます。
ホウ酸ダンゴのほうは、同じ質問にもっとはっきり答えていました。薬剤を食べたゴキブリはどこで死ぬのかと聞かれて、「定まった場所はありません。」
その先には、ホウ酸を食べたゴキブリが脱水症状に陥って乾燥死するまでの説明が続き、「通常、死骸が目につくことは、あまりありません。」とあります。そのうえで「一般的には、水を求めて下水などに行き、死ぬといわれています。」と締めくくられています。
目につかないところで動かなくなる、というのがメーカーの説明です。ただし「目につかない」は人間の目の話であって、家具のすきまに入る猫の目には別の景色が見えています。
猫がいる部屋に置けるかは、タイプごとに書き方が違います
ゴキブリ用の薬は、売り場では似た顔で並んでいます。けれども効き方がそれぞれ違うので、猫について書かれていることも変わります。アース製薬の回答を、タイプごとに分けました。
| タイプ | 製品の例 | 書かれていること |
|---|---|---|
| 置き型の毒餌 | ブラックキャップ | 薬剤は空気中に広がらない。触らせない置き場所に |
| ホウ酸ダンゴ | コンクゴキンジャム | なめた程度なら問題なし。食べたら獣医師へ |
| 粘着シート | ごきぶりホイホイ+ | 誘引剤にも粘着剤にも殺虫成分なし |
| 電気式の忌避 | マモルーム ゴキブリ用 | 影響はないと思われる。ときどき換気 |
| くん煙剤 | アースレッド | 換気するまでペットを部屋の外へ |
同じ会社の製品でも、答えがここまで分かれます。つまり「ゴキブリの薬は猫に大丈夫か」という聞き方では、答えが1つに決まりません。手元にあるのがどのタイプかを先に決めるところから始まります。
置き型でメーカーが条件にしたのは、成分ではなく置き場所でした
子供やペットがいる部屋で「ブラックキャップ」を使っていいかという質問には、「薬剤は空気中に広がりませんので、お子様やペットがいる部屋でもお使いいただけますが」とあります。使ってよい理由は、空気中に広がらないことでした。
そして条件が1つ付きます。「触ったりしないように置き場所にご注意ください。」
空気の心配は要らないかわりに、置き場所だけが条件として残るという構造です。では、どこに置くものなのか。冷蔵庫の中に置いてもいいかという質問への答えが手がかりになります。「冷蔵庫の周りに置いていただくことをお勧めします。」ゴキブリが通るところに置くもの、という前提です。
冷蔵庫の裏や流し台の下は、猫が体をねじ込んで入っていく場所でもあります。薬の置き場所と猫の通り道が、同じ家の同じところで重なります。
なお、この薬がゴキブリ以外に効くかどうかについては「ゴキブリ以外のムシに効果があるかは確認しておりません。」とされていました。効かないとも、害があるとも書かれていません。確認していない、という止め方です。カブトムシやスズムシを飼っている部屋では、答えがここで終わっていることだけ知っておくほうが安全側に立てます。
電気式には「ときどき換気」と「窓は開けたままにしない」が並んでいます
コンセントにさして使う「マモルーム ゴキブリ用」は、置き型とまったく違う答えでした。ペットや観賞魚がいる部屋で使っていいかという質問に、「通常の使用方法であれば水生動物を含むそれらペットに影響はないと思われます。」とあります。
「大丈夫です」ではなく「影響はないと思われます」。言い切っていないところに、条件が続きます。「閉めきった部屋や狭い部屋で使用する場合は、ときどき換気をしてください。」
換気については別のQ&Aにもあって、そちらはこう書かれていました。「人や犬・ネコなどの動物に対して安全性の高い薬剤を使用しておりますが、部屋を長時間閉め切ったままにせず、時々換気をしてください。」犬と猫を名指ししたうえで、閉め切らないようにという指示です。
ところが、窓を開けて使っていいかという質問の答えは逆を向いています。「換気程度であれば問題ありませんが、窓を開けた状態での使用は控えてください。」
矛盾ではありません。理由も書いてあります。効力を十分に発揮するには「室内に一定濃度以上の有効成分を蓄積させる必要があり」、開けっ放しでは効かないから、というのが説明でした。つまり閉め切って使い、ときどき窓を開けて空気を入れ替える。その往復が、この製品の使い方になります。
もう1つ、この製品には押さえておきたい性質があります。殺虫効果があるかと聞かれて、「殺虫効果ではなくゴキブリの忌避効果です。」と答えていました。ゴキブリは死なずに逃げる、ということ。猫が死骸を見つける場面は減りますが、ゴキブリがいなくなるわけではありません。
網戸まわりの虫よけを読んだときも、同じ会社がタイプごとに別の条件を書いていました。吹くもの・吊るすもの・貼るもので答えが分かれるのは、ゴキブリ用でも変わりません。
粘着シートで気をつけるのは、薬ではなく粘着剤のほうです
「ごきぶりホイホイ+」については、ペットが誘引剤を食べてしまったという質問がありました。答えは「誘引剤は魚粉・穀物・糖類など、食品に用いられるようなものばかりを原料にしています。」で、続けて「殺虫成分は含まれていません。」とされています。
粘着剤についても同じで、「粘着剤の粘着成分は有害なものではなく、殺虫成分も含まれていませんので、ご安心ください。」と書かれていました。このタイプは薬で殺すものではないので、成分の心配は小さいことになります。
かわりに出てくるのが、毛についたときの話です。ペットの毛に粘着剤がくっついた場合の手順があって、まず「ベビーパウダーや小麦粉などの粉末をまぶし、櫛ですくなどして粘着剤をできる限り取り除いてください。」とあります。
その次の行に、猫を飼っている人が読んでおきたい一文が入っています。拭き取るものとしてサラダ油・てんぷら油・ベンジンを並べたうえで、「小動物の場合にはベンジンによる悪影響も考えられますので、時間はかかりますがサラダ油・てんぷら油を使用してください」とただし書きが付きます。
ここで引っかかるのが「小動物」という言葉です。猫がこれに当たるかどうかは、この回答には書かれていません。
同じ会社には、ついた場所ごとに取り方を並べた別の回答もあります。そちらでベンジンが出てくるのは衣類の手順だけで、人体・ペットなどの動物・床には、サラダ油やてんぷら油が並んでいます。ペットの毛については、2つの回答で書き方がそろっていません。
そろっていないときに迷わない手はあります。油を選べば、どちらの回答にも収まります。猫が「小動物」に入るかどうかを決めなくても済みます。
設置したあとの扱いにも、猫のいる家では引っかかる答えがありました。ゴキブリが1匹くっついたら捨てたほうがいいかという質問に、「ゴキブリは集まる習性があります。粘着効果が弱まるまでそのまま様子を見てください。」とされています。つまり、かかったものを載せたまま置いておく期間があるということ。置き場所の条件は、置き型の毒餌と同じように効いてきます。
食べてしまったときの指示は、なめた場合と分かれています
ホウ酸ダンゴには、子供が容器をなめた場合とペットが食べてしまった場合を1つにまとめた質問があります。返ってきた答えは、場合ごとに分かれていました。
容器を触ったりなめた程度のときは、「容器を触ったり、なめた程度であれば問題ありません。」
中身を食べてしまったときは扱いが変わります。「万一誤って食べた場合はすぐ吐き出させ、直ちに成分名(ホウ酸を含む商品であること)を医師(または獣医師)に告げて、診療を受けてください。」
そして容器ごと食べた場合は、指示が逆になります。「容器を食べた場合は破片などで食道や内臓を傷つける心配もありますので、吐き出させずに医師(または獣医師)に告げて、診療を受けてください。」
吐き出させる場合と、吐き出させない場合。どちらに当たるかは何を食べたかで決まります。慌てている場面で読み分けるのは難しいので、置く前に目を通しておくほうが早く動けます。
くん煙剤については、もっと短い答えでした。「ペット(犬・猫・ハムスター・ウサギ・小鳥など)はしっかり換気するまで部屋の外に出してください。」観賞魚と観賞エビはさらに別扱いで、「観賞魚や観賞エビには毒性が強いのでご注意ください。」とあります。
これはメーカーの説明であって、当社が試験で確かめたものではありません。メーカーに問い合わせたわけでもなく、公開されている回答を読んだだけです。実際に猫が口にしたあとで様子がふだんと違うなら、そこから先は獣医師の領域になります。
猫が捕まえてきたゴキブリについては、書かれていません
ここまで読んできて、答えが見つからなかった質問が1つあります。薬を食べたゴキブリを猫が捕まえて食べた場合のことです。
読んだ範囲のQ&Aにあったのは、ペットが製剤そのものを口にした場合の指示だけでした。ゴキブリを経由した場合について書かれたものは見当たりません。加えて、猫がくわえてきたゴキブリが薬を食べたかどうかは、見た目では分かりません。
だからこの記事では、そこに答えを書きません。置く前に決められることは、ゴキブリの通り道と猫の通り道が重なっていないか、そして死骸が出てくる場所を自分で選べるか。この2つです。
クローゼットの防虫剤を調べたときも、メーカーは動物の種類で線を引いて答えていました。言い切りの一文だけを拾うと、その後ろにある条件を落とします。
よくある質問
- Q猫がいる部屋にゴキブリの置き型の薬を置いても大丈夫ですか?
- A
アース製薬は「ブラックキャップ」について、薬剤が空気中に広がらないのでお子様やペットがいる部屋でも使えるとしています。ただし「触ったりしないように置き場所にご注意ください」という条件が付きます。空気中に広がるかどうかではなく、猫の前足が届くかどうかで置く場所が決まる、ということ。お使いの製品については、パッケージの表示とメーカーの案内を確かめてください。
- Q猫がゴキブリを捕まえてきました。薬を食べたゴキブリかもしれません
- A
読んだ範囲のアース製薬の製品Q&Aには、この場合の指示は見当たりませんでした。書かれていたのは、ペットが製剤そのものを食べてしまった場合の手当てです。なお置き型の薬については「死ぬまでに最低でも数時間かかりますので、容器の中で死ぬことはありません」とされていて、ゴキブリが容器から離れてから動かなくなることは、メーカー自身が書いています。猫の様子がふだんと違うときは、動物病院に連絡してください。
- Q猫の毛に粘着剤がついてしまいました
- A
アース製薬の回答では、まずテープで取れるだけ取り、ベビーパウダーや小麦粉などの粉末をまぶして取り除くとされています。そのあと油やベンジンで拭き取る手順になりますが、小動物の場合はベンジンによる悪影響も考えられるとして、時間はかかってもサラダ油・てんぷら油を使うようにとただし書きが付いています。場所ごとに取り方を並べた別の回答では、ペットなどの動物の行にベンジンは出てきません。粘着成分そのものについては、有害なものではなく殺虫成分も含まれていないとされています。
- Qくん煙剤を使うとき、猫はどうすればいいですか?
- A
「アースレッド(水を使うタイプ)」については、ペットはしっかり換気するまで部屋の外に出すようにと書かれています。犬・猫のほかハムスター・ウサギ・小鳥が名前を挙げられていました。観賞魚や観賞エビは扱いが別で、エアーポンプを止めて完全密閉するか、同じように部屋の外へ、とされています。毒性が強いという注記も付いていました。
なお、ここで読んだのはアース製薬が公開している製品Q&Aです。ほかのメーカーの製品については確認していません。また、同じ会社の製品でもタイプが違えば答えが違うので、ここに書いた内容をほかの製品に当てはめることはできません。
