リードを外して歩いている犬を見かけると、あれは違反なのだろうかと迷います。調べると「条例違反」「罰金」という言葉が並びますが、東京都の条例が決めている罰は罰金ではありません。
条文の形も、思っているものと少し違います。条例が犬の飼い主に義務づけているのは「つないで飼養又は保管すること」で、散歩はそこから外れる場合として、ただし書きのほうに書かれています。さらに読み進めると、罰よりも先に起きることが別の条文に用意されていました。
この記事では東京都の条例と施行規則、それに刑法の条文をそのまま引きながら、何が義務なのか、違反したときに何が起きるのか、そして自分の住む都道府県で確かめる手順を見ていきます。
条例が義務づけているのは「つないで飼うこと」
まず、リードに関する決まりがどこにあるのかを見ておきます。国の動物の愛護及び管理に関する法律には、リードという言葉も、綱でつなぐという言葉も出てきません。飼い主の責務を定めた第七条が、第三項でこう書いているだけです。
3 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
必要な措置とだけあって、やり方は書かれていません。そのかわり同じ法律の第九条が、地方公共団体は条例で定めるところにより飼い主への指導などの措置を講ずることができる、としています。犬のつなぎ方を具体的に書いているのは、都道府県の条例のほうです。東京都動物の愛護及び管理に関する条例の第九条第一号には、こうあります。
一 犬を逸走させないため、犬をさく、おりその他囲いの中で、又は人の生命若しくは身体に危害を加えるおそれのない場所において固定した物に綱若しくは鎖で確実につないで、飼養又は保管をすること。ただし、次のイからニまでのいずれかに該当する場合は、この限りでない。
読んで気づくのは、主語が散歩ではないことです。条文が求めているのは、囲いの中に入れるか、固定した物につないでおくか。つまり家での飼い方が本体で、外を歩かせる話はここに入っていません。この形を押さえておくと、次のただし書きの意味が通ります。
散歩は「ただし書き」のほうに置かれている
ただし書きは四つあり、散歩と運動に当たるのは三番目のハです。
イ 警察犬、盲導犬等をその目的のために使用する場合 ロ 犬を制御できる者が、人の生命、身体及び財産に対する侵害のおそれのない場所並びに方法で犬を訓練する場合 ハ 犬を制御できる者が、犬を綱、鎖等で確実に保持して、移動させ、又は運動させる場合
散歩は、つないでおく義務の例外として許されている、という作りです。そしてハには条件が二つ付いています。犬を制御できる者であることと、綱や鎖で確実に保持していること。リードを手に持っていても、この二つから外れれば例外には乗りません。
規則が定める特例は、興行・展示・調教などに限られている
ただし書きの最後のニは「規則で定めるとき」となっていて、中身は別の規則に書かれています。東京都動物の愛護及び管理に関する条例施行規則の第三条が、それに当たります。
第三条 条例第九条第一号ニに規定する規則で定めるときは、次の各号に掲げるとおりとする。一 犬を制御できる者の管理の下で、犬を興行、展示、映画製作、曲芸、競技会、テレビ出演又は写真撮影に使用するとき。二 犬を制御できる者が犬を調教するとき。
挙がっているのは撮影や競技会といった場面で、ドッグランも日常の散歩も、この二つの号には書かれていません。ドッグランのような囲いのある場所をどう読むかは、条文からは決められない部分です。施設ごとの利用規則に従うと考えておくほうが確実です。
| 条文 | 何を定めているか |
|---|---|
| 条例 第九条第一号 本文 | 囲いの中、または固定した物に綱・鎖でつないで飼養・保管する |
| 同 ただし書き イ | 警察犬や盲導犬をその目的で使う場合 |
| 同 ただし書き ロ | 制御できる者が、侵害のおそれのない場所と方法で訓練する場合 |
| 同 ただし書き ハ | 制御できる者が綱・鎖等で確実に保持して移動・運動させる場合 |
| 同 ただし書き ニ | 規則で定めるとき(下の規則第三条) |
| 規則 第三条第一号 | 興行、展示、映画製作、曲芸、競技会、テレビ出演、写真撮影に使うとき |
| 規則 第三条第二号 | 制御できる者が調教するとき |
罰は罰金ではなく、拘留か科料
次に罰則を見ます。この条例の罰則は四つの条に分かれていて、額もそれぞれ違います。どの条がどの義務を受けているかを押さえると、読んだ数字が自分の知りたいことに対応しているか判断できます。
ノーリードを受けているのは、いちばん軽い条
第九条第一号に違反した場合を受けているのは、第四十条です。
第四十条 次の各号の一に該当する者は、拘留又は科料に処する。一 第九条第一号の規定に違反して、犬を飼養し、又は保管した者二 第二十九条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
罰金ではなく、拘留か科料と書かれています。この二つは刑の種類の名前で、金額や期間は条例ではなく刑法のほうに定めがあります。
拘留と科料がいくらかは刑法に書いてある
刑の重さを知るには、刑法の第十六条と第十七条を見ます。
(拘留)第十六条 拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。…(科料)第十七条 科料は、千円以上一万円未満とする。
科料は一万円に届きません。ただし拘留のほうは身体を拘束する刑で、お金で済む話ではありません。そして人に危害が及んだ場合は、次に出てくる命令の条文へ進みます。
三十万円と五万円は「命令や届出に従わなかったとき」
大きい額の条文は、ノーリードそのものではなく別の場面を受けています。前提になるのが第三十条の措置命令です。
第三十条 知事は、動物が人の生命、身体若しくは財産を侵害したとき、又は侵害するおそれがあると認めるときは、当該動物の飼い主に対し、次の各号に掲げる措置を命ずることができる。一 施設を設置し、又は改善すること。二 動物を施設内で飼養し、又は保管すること。三 動物に口輪を付けること。四 動物を殺処分すること。五 前各号に掲げるもののほか、必要な措置
この命令に従わなかったときに、三十万円以下の罰金や五万円以下の罰金が出てきます。四つの条を並べると、額が何に対応しているかがはっきりします。
| 条 | 罰 | 何に対して |
|---|---|---|
| 第三十七条 | 一年以下の拘禁刑 又は 三十万円以下の罰金 | 第三十条第四号の命令に従わなかった |
| 第三十八条 | 二十万円以下の罰金 | 報告の拒否、立入検査の妨害 |
| 第三十九条 | 五万円以下の罰金 | 特定動物等の逸走を通報しなかった/咬んだ犬を獣医師に検診させなかった/第三十条第一号から第三号の命令に従わなかった |
| 第四十条 | 拘留 又は 科料 | つながずに飼養・保管した/事故の届出をしなかった |
よく見かける「東京都は五万円」という説明は、第三十九条の額です。そちらは通報や検診、命令違反を受ける条で、つないでいなかったこと自体の罰ではありません。自分が読んでいる数字がどの条のものかを確かめると、こうした取り違えを避けられます。
罰より先に起きるのは、犬が収容されること
ここが、罰則の額より実際に効いてくる部分です。条例には、逸走した犬を行政が収容できる条文があり、しかもその根拠として第九条第一号がそのまま引かれています。
(犬の収容)第二十二条 知事は、飼い主が第九条第一号の規定に違反したため、逸走している犬があるときは、その職員をしてこれを収容させることができる。
つないでいなかったから逃げた、という流れがそのまま収容の要件になっています。刑罰の手続きを待つ必要がないぶん、こちらのほうが先に動きます。
引き取りには日数の期限がつく
収容されたあとは、公示と通知の条文が続きます。日数が短いので、連絡がついてから動き出すと間に合わないことがあります。
第二十四条 知事は、所有者の判明しない犬若しくは猫を引き取り、又は所有者の判明しない犬、猫等を収容したときは、当該動物の種類、収容等の日時、場所その他必要な事項を二日間公示するものとする。2 知事は、第二十二条第一項の規定により収容した犬の所有者が判明しているときは、その所有者に対し、通知を受けた日から二日以内にこれを引き取るべき旨を通知するものとする。3 知事は、所有者が第一項の公示期間満了の後二日以内に当該動物を引き取らないとき、及び所有者が前項の通知到達後二日以内に当該犬を引き取らないときは、これを処分することができる。
所有者が分かっているかどうかで、期限の数え方が変わります。分かっていれば通知が届き、分からなければ二日間の公示だけです。身元がすぐに分かる状態にしておくと、この差がそのまま時間の差になります。鑑札とマイクロチップは、そのための仕組みです。


自分の都道府県で条文を確かめる
ここまで引いてきたのは東京都の条文です。この種の条例は都道府県ごとに作られていて、義務の書き方も罰の種類も同じとは限りません。住んでいる場所の条文を自分で開けるようにしておくと、数字を取り違えずに済みます。
探すときは、都道府県名と「動物の愛護及び管理に関する条例」を並べて検索し、自治体の例規集に入っているものを開きます。見る場所は三つです。犬の飼い主の遵守事項を書いた条、ただし書きがあるかどうか、そして罰則の章でその条が何条に受けられているか。この順にたどれば、自分の地域の罰の種類まで確かめられます。
同じ「ノーリード」でも、条例によって罰の種類が変わります。記事や知恵袋で見た金額は、別の都道府県の条文か、同じ条例でも別の条の額であることがあります。
リードを外している犬を見かけたとき
自分の犬ではなく、よその犬が放されている場面に出会うこともあります。この条例を動かすのは知事で、収容も措置命令も行政の側の権限として書かれています。監視にあたる職員についても、条文に定めがあります。
第三十二条は、犬の収容や立入検査などの事務を行わせるため、知事が動物監視員を置くと定めています。そして動物監視員には、獣医師など動物の適正な飼養に専門的な知識を持つ職員が充てられます。どこへ連絡するかは自治体によって窓口が違います。お住まいの都道府県や市の案内でご確認ください。
なお、犬が人に危害を加えてしまったときは、飼い主の側にも条文上の義務があります。第二十九条は、事故の発生から二十四時間以内に知事へ届け出ること、そして犬が人をかんだときは四十八時間以内に狂犬病の疑いの有無を獣医師に検診させることを求めています。時間が決まっているので、落ち着いてから調べるのでは遅くなります。
よくある質問
条文を読んでいて迷いやすいところを三つまとめました。いずれも東京都の条文をもとにしています。
- Qリードを持ってさえいれば、条例の義務は守れていますか。
- A
ただし書きのハは「犬を制御できる者が、犬を綱、鎖等で確実に保持して」と書いています。持っていることではなく、確実に保持していることと、制御できる者であることの二つが条件です。
長さを伸ばせるリードや、手から離れやすい持ち方がここに当たるかどうかは、条文からは読み取れません。確実に保持できる状態かどうかで選ぶと、判断の軸がぶれません。
- Qドッグランの中でリードを外すのは違反になりますか。
- A
施行規則の第三条が定める特例は、興行や展示、映画製作、曲芸、競技会、テレビ出演、写真撮影に使うときと、調教するときの二つです。ドッグランは挙がっていません。
一方で条例の本文は、囲いの中で飼養または保管することを求めています。囲いのある施設をどう読むかは条文からは決められないので、その施設の利用規則に従うのが確実です。
- Qノーリードで実際に科される罰はどのくらいですか。
- A
東京都の条例では、第四十条が拘留または科料と定めています。刑法の第十六条で拘留は一日以上三十日未満、第十七条で科料は千円以上一万円未満とされています。
ただし人に危害が及べば、第三十条の措置命令や、その命令に従わなかった場合の罰金の条へ進みます。軽い罰で終わる話として読まないほうがよい部分です。
まとめ
東京都の条文をたどると、ノーリードをめぐる話は三つの層に分かれていました。義務の形、罰の種類、そして罰より先に動く収容の手続きです。
義務の本体は「つないで飼養又は保管すること」で、散歩はただし書きのハによって外されています。罰は第四十条の拘留または科料で、よく挙がる三十万円や五万円は命令や届出を受ける別の条の額でした。そして第二十二条の収容は、第九条第一号の違反をそのまま要件にしています。
どの条がどの場面を受けているかが分かれば、自分の都道府県の条例も同じ順番で読み解けます。リードそのものの選び方は、犬用ハーネス・首輪・リードおすすめ22選|タイプ別の選び方にまとめています。
出典: 東京都例規集「東京都動物の愛護及び管理に関する条例」/東京都例規集「東京都動物の愛護及び管理に関する条例施行規則」/e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」/e-Gov法令検索「刑法」(2026年10月27日に確認)。条例は都道府県ごとに内容が異なるため、お住まいの地域の条文でご確認ください。
