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ペットフードは人間が食べても大丈夫?|法律が守るのは犬と猫の健康

ペットフードの法律が守る相手を表すアイキャッチ ペット
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袋に「ヒューマングレード」と刷られたフードを手に取って、これは人間が口にしても差し支えないものなのだろうか、と思ったことはありませんか。猫が夢中で食べている様子を見ていると、どんな味がするのか試してみたくなる日もあります。

この問いには、味や原材料より先に確かめておきたいことがあります。ペットフードを見ている法律と、人間の食べものを見ている法律は別で、しかも守ろうとしている相手そのものが違うというのが肝心なところです。農林水産省は自分の質問集で、その点をはっきり書いています。

この記事では、誰が何を保証していて、何は保証していないのかを条文から並べました。食べてよいかどうかの答えそのものは、実はどの法律にも書かれていません。それでも判断の材料がどこまでそろっているのかは、読めばはっきりします。

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守っている相手が、二つの法律で違う

ペットフードには、ペットフード安全法という通称があります。正式には愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律といい、2008年6月に公布されました。いっぽう人間の食べものを見ているのは食品衛生法のほうで、こちらは1947年から続いています。

二つを並べて意味が出てくるのは、それぞれの第一条です。法律の第一条には目的が書かれていて、そこにその法律が誰のために作られたのかが現れます。

法律第一条が掲げる目的守る相手
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与すること犬と猫
食品衛生法国民の健康の保護を図ることを目的とする人
二つの法律が、条文で守ると書いている相手

ペットフード安全法の目的は「愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与すること」で、人間はそこに出てきません。食品衛生法のほうは「国民の健康の保護を図ることを目的とする」と書かれていて、犬や猫は出てきません。条文の時点で、見ている先が分かれているわけです。

国は「人の安全は想定していない」と書いている

これは読み手の解釈ではありません。農林水産省が公開している質問集に、こういう問いが立てられています。「ペットフード安全法は、人への安全に寄与することを想定していないのですか」。

答えはこうです。同法は愛玩動物の健康を保護することとしており、「人の安全に寄与することを想定していません」。想定の外にある、と国が自分で書いています。

つまり、袋に表示がそろっていても、国の検査が入る仕組みがあっても、そこで確かめられているのは犬や猫にとっての安全のほうです。人間にとってどうかという問いに、この法律は答えを出していません。

「人も食べられます」と書くときは、別の法律の話になる

では、人間も食べられると袋に書いてあるフードはどうなるのでしょうか。同じ質問集に、まさにその問いがあります。

保健所に相談する手続きがある

「ペットフードのパッケージに、『人も食べることができます』と記載してもいいですか」という問いに対して、国はこう答えています。ペットフード安全法の遵守に加えて、「人も食べる食品として製造等する場合は、食品衛生法についても遵守する必要があります」。そのうえで、管轄の保健所に事前に相談して指導に従うように、と続きます。

ここから分かるのは、人間が食べることを前提にしたフードを作るには、ペットフードの法律だけでは足りないということです。人間の食べものの側の法律と、保健所という窓口が、そこで初めて出てきます。

なお、食品衛生法の第四条は「この法律で食品とは、全ての飲食物をいう」と定めていて、ペットフードを名指しで除く文言は置かれていません。ただし同法の目的は国民の健康の保護なので、ペットフードがどこまで入るのかは、この一文だけでは決まらないままです。はっきりしているのは、人も食べる食品として作るならそちらの遵守が要る、というところまでになります。

「ヒューマングレード」は義務づけられた欄にない

袋に表示しなければならない項目は、省令の別表で5つに決められています。名称、原材料名、賞味期限、事業者の氏名または名称と住所、そして原産国名の5つです。この中に「ヒューマングレード」も「人も食べられます」も入っていません。

5つの欄がそれぞれ何を指しているかは、キャットフードの原材料表示の読み方にまとめました。原産国名が最終加工した国を指していることなど、言葉の印象とずれる項目がいくつかあります。

ヒューマングレードという言葉そのものを禁じる決まりは見当たりません。うその表示であれば景品表示法の優良誤認が問われますし、書いた内容には書いた事業者の責任が伴います。ただし国が定めた欄ではないので、袋のどこを見ても同じ意味で書かれているとは限りません。似た事情は「無添加」という言葉にもあって、そちらは無添加ドッグフードの意味と選び方で整理しています。

中身の上限値は、犬と猫の体に合わせた数字

ペットフード安全法には、人間の食べものと同じように成分の上限値があります。愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令の別表に、重金属や有害な物質の上限が並びます。カドミウムは1グラムあたり1マイクログラム、鉛は3マイクログラム、メラミンは2.5マイクログラムです。

同じ物質でも、犬と猫で値が違う

注目したいのは、数字が一律ではない点です。かび毒のデオキシニバレノールは、犬用が1グラムあたり2マイクログラム、猫用が1マイクログラムと分けられています。酸化防止剤のエトキシキンにいたっては、1トンあたり75グラムという上限が犬用にだけ定められています。

体の大きさも代謝のしかたも違うので、同じ物質でも許される量が変わる、という組み立てです。人間を基準にした数字ではないことが、この分け方からも読み取れます。

猫のフードに使えない物質がある

同じ省令の製造の方法の基準には、「プロピレングリコールは、猫を対象とする販売用愛玩動物用飼料に用いてはならない」という一文があります。犬用には上限値すら置かれていない物質が、猫用では全面的に使えません。

この物質は、人間の食品の側では認められています。食品衛生法施行規則の別表第一に、指定添加物の三百七十七番としてプロピレングリコールが挙がっているためです。人間が食べられるかどうかと、猫が食べられるかどうかは別の話だと、二つの法令がそれぞれの表で示していることになります。

そもそも法律がいう「ペット」は犬と猫だけ

もうひとつ押さえておきたいのが、この法律の守備範囲です。法律の第二条第一項は、愛がん動物を「愛がんすることを目的として飼養される動物であって政令で定めるもの」と定義しています。動物の名前を法律自体は書いておらず、政令に預ける形です。

その政令にあたる施行令の第一条は、「政令で定める動物は、犬及び猫とする」と書いています。一行です。つまり犬と猫のフード以外は、表示の義務も成分の上限値もこの法律からはかかりません。

法律ではなく政令で決めているということは、法律を変えなくても対象を増やせる建て付けでもあります。国の質問集も「現在は犬・猫が対象です」という書き方をしていて、この先も同じとは書いていません。

ペットのために買うものペットフード安全法
犬猫用のフード、おやつ、ガム対象
犬猫用のサプリメント対象
ペット用の飲み水対象
犬猫の栄養のために売られる生肉対象
猫草(種を含む)対象外
またたび(香付けや遊具のもの)対象外
うさぎ、ハムスター、鳥のフード対象外
おもちゃ、フードの容器対象外
動物用医薬品対象外(薬機法の側)
ペットフード安全法の対象になるもの・ならないもの

猫草が外れているのは、毛を吐き出させることが目的で栄養のために与えるものではないから、という整理です。またたびも香付けや遊具として売られているものは外れますが、ビタミンやミネラルを配合して摂取させる作りになっていればサプリメントと同じ扱いで対象に入ります。商品の名前ではなく、何のために与えるかで分かれます。

よくある質問

Q
ヒューマングレードと書いてあれば、人間が食べられるという意味ですか
A

この言葉に法律上の決まった意味は見当たらず、国が表示を義務づけた5つの欄にも入っていません。人も食べる食品として作る場合は食品衛生法についても遵守する必要がある、と国は案内しているので、そこまで踏んでいるかどうかは袋の言葉だけでは分かれません。

Q
犬用と猫用で、中身の決まりは同じですか
A

違います。省令は同じ物質でも犬用と猫用で上限値を分けていて、デオキシニバレノールは猫用のほうが半分の値です。プロピレングリコールのように、猫を対象とするフードには使ってはならないと定められている物質もあります。

Q
うさぎやハムスターのフードにも、同じ表示の義務がありますか
A

ペットフード安全法の対象は政令で犬と猫に限られているので、この法律からは表示の義務も成分の上限値もかかりません。家畜の飼料を見ている飼料安全法のほうも、政令が挙げている動物は牛、馬、豚、めん羊、山羊、鹿、鶏、うずら、蜜蜂と養殖の魚で、うさぎやハムスターは入っていません。

Q
猫草やまたたびも、ペットフードの法律で見てもらえますか
A

どちらも栄養のために与えるものではないという整理で、対象から外れています。ただしまたたび製品でも、ビタミンやミネラルを配合してその成分を摂取させることを目的にしたものは、サプリメントと同じように対象になります。

袋の言葉より先に、誰のための基準かを見る

ペットフードの袋には、国が義務づけた5つの欄と、事業者が自分の判断で書いた言葉が同居しています。前者は犬と猫の健康を守るために置かれたもので、人間にとっての安全を誰かが確かめた結果ではありません。国が想定の外だと明言しているとおりです。

人間も食べられる作りにするなら、食品衛生法と保健所が関わってきます。その手続きを踏んでいるかどうかは、ヒューマングレードという4文字からは読み取れません。気になったときは、作っている会社がその点をどう説明しているかを見にいくのが近道です。

なお、体調に不安が出たときの判断は法律の話ではありません。かかりつけの動物病院や、人間であれば医療機関に相談してください。

この記事は愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成20年法律第83号)、同法施行令(平成20年政令第366号)、愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令(平成21年農林水産省・環境省令第1号)、食品衛生法(昭和22年法律第233号)、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律施行令(昭和51年政令第198号)、および農林水産省「ペットフード安全法Q&A」をもとに作成しました(いずれも2026年10月26日に確認)。制度は改正されることがあるので、最新の内容は農林水産省と環境省の公表資料でご確認ください。

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