猫や犬がいなくなったとき、まず思いつくのがポスターです。ところが貼る場所には屋外広告物条例という決まりがあって、電柱や街路灯の柱は、はり紙を貼ってはいけない物件として名前が挙がっています。
しかも条文を読むと、少し意外な作りになっています。条例は、はり紙を三十万円の罰金の対象から外したうえで、別の条文で五万円以下の過料に振り分けているのです。そのうえ、はり紙は命令を出さずに剥がせる仕組みになっていて、国の別の法律も重なります。
この記事では、東京都の条例と国の法律の条文をそのまま引きながら、貼ってはいけない物件、貼ったときに実際に起きること、許可をもらって貼れる場所の順に見ていきます。自分の住む市で確かめる手順もまとめました。
条例は「ポスター」を名前で書いている
屋外広告物というと、看板や広告塔を思い浮かべるかもしれません。ただし条例が扱う範囲はもっと広く、紙を一枚貼る行為まで入ってきます。東京都屋外広告物条例の第七条第二項には、こうあります。
次に掲げる物件には、はり紙(ポスターを含む。以下同じ。)、はり札等、広告旗、又は立看板等を表示し、又は設置してはならない。一 電柱、街路灯柱及び消火栓標識 二 アーチの支柱及びアーケードの支柱
かっこの中で、条例が自分から「ポスターを含む」と言い切っています。つまり迷子ポスターは、企業の広告と同じ枠で読まれます。貼る前に場所を選んでおけば、あとで剥がされて作り直す手間を避けられます。
電柱は、相談して許可をもらえる場所ではない
同じ条例の第十五条には、電柱や街路灯柱を使って広告を出すことを知事が許可できる規定もあります。ただしそちらの条文が挙げているのは「公衆の利便に供することを目的とするもの」で、住所表示板や案内板のような、取り付ける形のものを指します。
一方のはり紙は、第七条第二項で禁じられている側に置かれています。そのため、申請すれば貼れるようになる種類のものではありません。電柱は最初から候補から外すと考えておくほうが、動き出しが早くなります。
街路樹やガードレール、郵便ポストも対象に入る
第七条の第一項は、はり紙に限らず広告物そのものを禁じる物件を並べています。ここには、ポスターを貼りたくなる場所がいくつも入っています。
一 橋(橋台及び橋脚を含む。)、高架道路、高架鉄道及び軌道 二 道路標識、信号機及びガードレール 三 街路樹及び路傍樹 (中略) 五 郵便差出箱、信書便差出箱、公衆電話ボックス、送電塔、テレビ塔、照明塔、ガスタンク、水道タンク、煙突及びこれらに類するもの 六 形像及び記念碑 七 石垣及びこれに類するもの
木の幹に紙を巻きつける、ガードレールに結びつける、郵便ポストに貼る。どれも人目につく場所ですが、条文の側から見ると並んで禁じられています。
| 貼れない物件 | 根拠(東京都の条例) |
|---|---|
| 電柱、街路灯柱、消火栓標識 | 第七条第二項 |
| アーチ・アーケードの支柱 | 第七条第二項 |
| 街路樹及び路傍樹 | 第七条第一項 |
| 道路標識、信号機、ガードレール | 第七条第一項 |
| 郵便差出箱、公衆電話ボックス | 第七条第一項 |
| 橋、高架道路、高架鉄道 | 第七条第一項 |
| 形像及び記念碑、石垣 | 第七条第一項 |
第六条のほうには、物件ではなく場所の禁止も並びます。条文が挙げているのは、国や公共団体が管理する公園・緑地・運動場・動物園・河川、学校、病院、公会堂、図書館、博物館などの建造物の敷地と官公署の敷地、古墳・墓地・火葬場・葬儀場、社寺や教会の境域、そして道路や鉄道の路線用地です。掲示板を見かけても、敷地ごと禁止区域に入っていることがあります。
なお、ここでいう「病院」が動物病院まで含むのかは、条文からは読み取れません。あとで出てくる「動物病院に置かせてもらう」も、施設の人に確かめてからという前提になります。
貼ったらどうなるのか
禁じられていると分かっても、では何が起きるのかが見えないままだと判断できません。罰則の条文は二つに分かれていて、はり紙はそのうち軽いほうへ振り分けられています。
三十万円の罰金ではなく、別の条文が受けている
条例の第六十八条が三十万円以下の罰金を定めています。その第一号のかっこ書きが効きます。
一 第六条又は第七条第一項の規定に違反した者(第六条各号に掲げる地域若しくは場所又は第七条第一項各号に掲げる物件にはり紙、はり札等、広告旗又は立看板等を表示し、又は設置した者を除く。)
ただし「罰則が無い」という意味ではありません。外したぶんを、次の過料の条文が引き受けています。軽い枠に振り分けられていると読むのが条文の形です。
代わりに五万円以下の過料が置かれている
第七十一条が過料を定めていて、その第一号がはり紙を受けます。
次の各号の一に該当する者は、五万円以下の過料に処する。一 第六条第十号に掲げる地域及び当該地域に設置された物件にはり紙、はり札等、広告旗又は立看板等を表示し、又は設置した広告物の表示者等
ここで引かれている第六条第十号は「道路、鉄道及び軌道の路線用地」です。条文は地域だけでなく「当該地域に設置された物件」まで書いているので、道路に立っている柱や囲いも含めて読む作りになっています。金額の桁を見て軽く考えるより、過料が用意されている行為だと知っておくほうが、貼る場所を選び直せます。
さらに、国の軽犯罪法が別に重なる
条例とは別の線として、軽犯罪法があります。第一条は、各号に当たる者を拘留または科料に処すると定めていて、その三十三号がはり札を取り上げています。
三十三 みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者
電柱は道路に立っていますが、自分のものではありません。そのため条例とは別に、この条文が重なる場合があります。どの行為が当てはまるかは条文から一律には決まらないので、断りを入れて貼れる場所を選ぶほうが確実です。
一方で同じ法律の第四条は、適用にあたって国民の権利を不当に侵害しないよう留意し、本来の目的を逸脱して濫用してはならないと定めています。東京都の条例も第一条第二項で基本的人権への留意を書いています。つまり、紙を一枚貼ったらただちに、という読み方をする条文ではありません。「みだりに」に当たるかどうかを決めるのは、こちらではなく運用する側です。
いちばん先に起きるのは、黙って剥がされること
実際に多いのは罰則の話より前の段階です。国の屋外広告物法の第七条第四項は、違反した広告物がはり紙である場合について、知事が自ら除却できる、またはその命じた者に除却させることができると定めています。同じ条文の第一項にある「期限を定めて命ずる」手順を踏まずに動かせる仕組みです。
貼った紙がいつ無くなるか分からないのであれば、同じ時間を使うなら残る場所に絞って貼るほうが結果につながります。
では、どこなら貼れるのか
禁じられている側を並べたので、ここからは残っている方法を見ます。共通しているのは、その場所を管理している人の了解をもらうという一点です。
動物病院や店舗に置かせてもらう
いちばん届きやすいのは、猫を連れた人が集まる場所です。動物病院、ペットショップ、トリミングサロンのように、迷子の相談そのものが珍しくない場所なら、話が通りやすくなります。
頼むときは、自分で貼るのではなく置かせてもらう形にすると角が立ちません。掲示をやめる日を先に伝えておくと、相手も預かりやすくなります。
自治会の掲示板や集会所に相談する
町内の掲示板は、管理している自治会や町内会が掲示の順番を決めています。勝手に貼ると、先に貼られていたものの上になってしまうことがあります。回覧を回している役員に聞けば、空いている枠を教えてもらえることがあります。
私有地は、持ち主に聞いてから貼る
駐車場の壁、工事現場の仮囲い、個人の塀。どれも誰かの所有物なので、持ち主の了解があれば話は変わります。逆に言えば、了解が無ければ軽犯罪法の三十三号が重なる場所でもあります。
自分の家の塀や玄関なら、他人の工作物ではありません。最初の一枚は、まず自宅まわりから始められます。
自分の市のきまりを確かめる
ここまで引いたのは東京都の条例です。屋外広告物法が都道府県の条例に委ねる作りになっているため、禁止される物件も罰則の金額も、住んでいる場所で変わります。
同じ東京都でも、八王子市は都の条例の外
都の条例には、こういう条文が入っています。
第六十六条の二 この条例の規定は、八王子市の区域における屋外広告物及び屋外広告業については、適用しない。
同じ都内でも、八王子市では市のきまりを見ることになります。町田市についても、禁止や許可に関する条例の制定を市が処理すると定めた条文があります。県境をまたぐ話ではなく、隣の市でも違うという前提で調べたほうが確実です。
窓口の名前は市によって違う
札幌市は公式サイトで「広告旗を道路(歩道)上に出したり、はり紙・はり札などを電柱等に貼ることは違反です」と見出しに書き、禁止区域・禁止物件と適用除外のページを分けて置いています。担当は道路を扱う部署で、建築や景観の部署が受け持つ市もあります。
探すときは市の名前と「屋外広告物」で引くと、禁止物件の一覧と適用除外のページにたどり着けます。市ごとに適用除外のページが用意されているので、自分の市のそこまで開くと判断が変わることがあります。
犬の場合も、同じきまりが当てはまる
ここまで猫を例にしてきましたが、条例はポスターの中身を見分けません。犬を探すポスターでも、電柱に貼れば同じ条文に当たります。
一方で、連絡先のほうは犬と猫で扱いが分かれます。警察と自治体のどちらに連絡するか、収容の期限がどうなっているかは別の記事にまとめました。

ポスターを作る前の備えとしては、迷子札やマイクロチップのほうが先に効きます。名前と連絡先が首元にあれば、見つけた人がその場で連絡できます。

よくある質問
- Q見つかったあと、貼ったポスターはどうすればいいですか?
- A
貼らせてもらった場所を回って、自分で剥がします。置かせてもらった店や動物病院には、見つかったことを伝えると次に頼みやすくなります。
剥がし忘れた紙は、見た人が連絡してしまう原因になります。貼った場所を紙に書いておくと、回収の抜けを防げます。
- Q非営利なら、条例の対象外になりませんか?
- A
市によって扱いが違います。屋外広告物法は適用除外を条例に委ねているので、非営利の掲示をどこまで外すかは市ごとに書かれています。
ただし、東京都の条例が電柱・街路灯柱・消火栓標識を挙げている第七条第二項には、営利か非営利かの区別は書かれていません。自分の市の「適用除外」のページで、何がどこまで外れているかを確かめてください。
- Qポスターに懸賞金を書いてもいいですか?
- A
掲示できる場所の問題とは別の話になるので、この記事では扱いません。謝礼の約束は金額の大小にかかわらずあとで揉めることがあるため、書く前に家族の間で決めておくほうが安全です。
まとめ
迷子ポスターは、条例が「はり紙(ポスターを含む)」と名前を書いている対象です。電柱・街路灯柱・消火栓標識、街路樹、ガードレール、郵便ポストは条文が名前を挙げている物件なので、最初から外して考えられます。
罰則は三十万円の罰金ではなく、五万円以下の過料のほうに振り分けられています。それとは別に軽犯罪法が重なり、さらに、はり紙は命令を出さずに剥がせる作りになっています。いちばん早く起きるのは、黙って剥がされて無駄になることです。
残っている方法は、管理している人に了解をもらうという一点に集まります。動物病院や店舗に置かせてもらう、自治会の掲示板を聞く、私有地は持ち主に聞く。そして自分の市の「屋外広告物」のページで、禁止物件と適用除外を開いておく。この順で動けば、作った紙が長く残ります。
出典: e-Gov法令検索「屋外広告物法」/e-Gov法令検索「軽犯罪法」/東京都例規集「東京都屋外広告物条例」/札幌市「はり紙・はり札などを電柱等に貼ることは違反です」(2026年10月27日に確認)。禁止される物件も適用除外も市によって違うので、お住まいの市の案内でご確認ください。
