保護猫や保護犬の里親に申し込んで、年齢や家族構成を理由に断られたという話は、検索するといくつも出てきます。それが決まりごとなのか、募集している側の判断なのかは、申し込みのページを読んでも見分けがつきません。
迎える人の条件について法律がどこまで決めているかを先に押さえておくと、募集ページの読み方が変わります。動物愛護管理法をはじめから終わりまで追っても、里親の年齢や世帯についての条文は出てきませんでした。代わりに条文が並んでいるのは、譲り渡す側にかかる届出のほうです。
この記事では、法律が引いている線と、各団体や自治体が自分で引いている線を分けて並べます。自治体の譲渡条件は公式ページに出ているので、広島県とさいたま市と水戸市を実際に読み比べて、どこがどう違うのかも載せました。
法律に「里親の条件」は書かれていない
里親になる人の条件が、どこかの法律にまとめて書いてあるわけではありません。動物愛護管理法のうち譲り渡す相手に触れている部分はごく短く、そこに年齢も家族構成も現れません。読み落としではないことは、条文を語で検索すれば確かめられます。
条文が挙げているのは「飼養を希望する者」だけ
自治体が引き取った犬や猫をどうするかは、動物愛護管理法の第三十五条が決めています。その第四項は、所有者を探して返すよう努めることと並べて、譲り渡す相手についてこう書いています。
所有者がいないと推測されるもの、所有者から引取りを求められたもの又は所有者の発見ができないものについてはその飼養を希望する者を募集し、当該希望する者に譲り渡すよう努めるものとする。
挙がっているのは「その飼養を希望する者」だけで、年齢にも世帯にも触れていません。さらに同じ第三十五条の第六項は、この仕事を民間に任せられることまで定めています。
都道府県知事等は、動物の愛護を目的とする団体その他の者に犬及び猫の引取り又は譲渡しを委託することができる。
団体が窓口になっている場合でも、条文の側から細かい条件が降りてくるわけではありません。条件をどう組み立てるかは、引き受けた側に委ねられています。
年齢も世帯も、条文には一度も現れない
法律の本文をはじめから終わりまで検索しても、「里親」という語は一度も出てきません。「年齢」と「世帯」も同じで、どちらも条文には現れませんでした。探し方が足りないのではなく、法律がそこを決めていないということです。
だから「一人暮らしだから」「六十歳を超えているから」という線は、法律が引いたものではありません。断られた理由を条文に探しても見つからないので、理由が知りたいときは募集している側に直接たずねるほうが早く進みます。
法律が決めているのは、譲り渡す側のほう
迎える側の条件が空いている一方で、譲り渡す側には条文がきちんと置かれています。犬や猫をある数より多く預かって譲渡を続ける場合に、都道府県への届出を求めるという形です。ここを知っておくと、団体を見るときに何を確かめればよいかがはっきりします。
犬と猫は十頭から届出がいる
動物愛護管理法の第二十四条の二の二が、第二種動物取扱業の届出を定めた条文です。販売ではない譲渡しや保管を業として行う場合が、ここに当たります。
飼養施設(環境省令で定めるものに限る。…)を設置して動物の取扱業(動物の譲渡し、保管、貸出し、訓練、展示…)を行おうとする者(第十条第一項の登録を受けるべき者及びその取り扱おうとする動物の数が環境省令で定める数に満たない者を除く。)は、…飼養施設を設置する場所ごとに、…次の事項を都道府県知事に届け出なければならない。
「環境省令で定める数」は施行規則の第十条の五にあって、動物の大きさで分かれています。犬と猫は中型動物に入り、そこにはこう書かれています。
中型動物(犬、猫又はこれらと同等以上の大きさを有する哺乳類、鳥類若しくは爬虫類に属する動物。ただし、大型動物は除く。)の合計数 十
合わせて十頭以上を扱うなら届け出る、という線がここで引かれました。逆にいえば、扱っている頭数がこれに届かない人は、この条文の対象ではありません。
自宅で九頭までの個人は、届出の対象から外れる
同じ第十条の五の第一項は、届出が要るかどうかを分ける「飼養施設」そのものを絞り込んでいます。
法第二十四条の二の二の飼養施設は、人の居住の用に供する部分と区分できる施設(動物(次項に規定する数を超えない場合に限る。)の飼養又は保管を、一時的に委託を受けて行う者の飼養施設を除く。)とする。
住まいと区分できる施設であることが前提なので、自宅の一室で預かっている形は、ここでいう飼養施設に当たりません。一時的に預かるボランティアの施設も、括弧の中ではっきり除かれています。
つまり登録や届出の名簿に名前が無いことは、手続きを怠っていることを意味しません。頭数と施設の条件に届いていない個人には、届け出る先そのものがないからです。
譲渡を業とする団体には帳簿がある
届出をした側には、記録の義務もついてきます。第二十四条の四の第二項が、販売業者に向けた条文を読み替えて当てはめる形になっています。
犬猫等の譲渡しを業として行う第二種動物取扱業者については、第二十一条の五第一項の規定を準用する。
準用される第二十一条の五第一項は、動物を所有した日や譲り渡した日などを帳簿に記載して保存するよう求めた条文です。どこから来てどこへ行ったかを残す仕組みは、届出をした団体の側にだけ置かれました。
自治体の条件は公開されていて、読み比べられる
団体ごとの条件はそれぞれのページを見るしかありませんが、自治体の譲渡条件は公式ページに箇条書きで並んでいます。三つのセンターを読み比べると、同じ「自治体の譲渡」でも中身がかなり違うことが分かります。
| 項目 | 広島県 | さいたま市 | 水戸市 |
|---|---|---|---|
| 住んでいる場所 | 管外・県外も可 | 市内在住 | 市内在住 |
| 年齢 | 成人(65歳以上は同意書) | 原則65歳まで・未成年不可 | 20歳以上 |
| 先に飼っている犬猫 | 同種がいない人を優先 | ページに記載なし | 合計2頭以下が原則 |
| 講習会 | 受講が条件(済証は1年有効) | 参加できること | 流れの中で受講 |
| 自宅訪問 | ページに記載なし | ページに記載なし | 譲渡の前と後に実施 |
| お試し期間 | ページに記載なし | 2週間程度 | 2週間 |
住んでいる場所の条件は、自治体をまたぐと逆になる
水戸市は里親の基準の一番目に住所を置いています。
水戸市在住で年齢20歳以上の方
さいたま市も同じように、市内に住んでいることを最初の条件にしています。
さいたま市内在住であること(原則65歳まで、未成年不可)
ところが広島県のページには、これと反対のことが書かれています。
管外(広島市、呉市、福山市及び広島県外)の方にも広く譲渡していますので、譲渡を希望される方は譲渡前講習会を受講してください。
住んでいる場所で迎えられるかどうかは、自治体をまたぐと向きが変わります。近くのセンターが市内在住に限っていても、隣の県が受け付けていることがあるわけです。
年齢の扱いも、同じではない
さいたま市は原則六十五歳までと上限を書き、水戸市は二十歳以上とだけ書いて上限を置いていません。広島県は成人であることを基準にしたうえで、年齢が上の人には別の書類を求めています。
飼育希望者が65歳以上の場合は、飼育ができなくなったときに備え、預けられる人を事前に見つけていること。
三つを並べると、年齢そのもので線を引く自治体と、備えがあるかどうかを見る自治体に分かれていました。同じ年齢の人でも、申し込む先によって答えが変わります。
申し込む前に読んでおくとよいもの
条件が団体ごとに違う以上、こちらが先に読めるものを押さえておくと話が早く進みます。条文で裏が取れる範囲なら、手がかりになるのは次の三つです。
一つめは届出の有無です。犬や猫を十頭以上扱って施設を構えているなら第二種動物取扱業の届出があるはずなので、都道府県の動物愛護管理の窓口で確かめられます。小さく活動している個人には届出がないほうがふつうなので、無いこと自体を問題として扱う必要はありません。
二つめは、署名を求められる書類です。自治体も団体も誓約書を使っていることが多く、水戸市は基準の前書きにこう置いています。
里親は次のすべての条件を満たす方に限らせていただきます。
三つめは、迎えたあとに求められることです。不妊去勢手術や室内での飼育、自宅への訪問が条件に入っていることがあるので、申し込む前に目を通しておくと、途中で話が止まりにくくなります。
断られたときに残っている道
ある団体の条件に合わなかったとしても、迎える道がそこで閉じるわけではありません。自治体の譲渡は条件が公開されているので、自分が当てはまるかどうかを申し込む前に確かめられます。
自治体の譲渡は、第三十五条第四項が努力義務として置いている仕事です。講習会を受けてから譲渡会に進む形が多く、広島県は受講した人に受講済証を出しています。さいたま市は申し込みと講習のあとに、審査とお試し期間を置いていました。
住所の条件が合わないときも、広島県のように管外の人へ広く譲渡している自治体があります。近いセンターが対象外でも、少し範囲を広げると受け付けている先が見つかることがあります。
条件が合わなかった理由は相手ごとに違うので、断られた先に食い下がるより、条件が公開されている側から当たるほうが動きやすくなります。
よくある質問
ここまでの内容から、特に聞かれやすいものを三つまとめました。
- Q保護猫を迎えるのに、法律で決まった条件はありますか。
- A
迎える人についての条件は、動物愛護管理法には書かれていません。条文が示しているのは「その飼養を希望する者」という一語だけで、そこから先は何も定めていないからです。
各団体や自治体が掲げている条件は、それぞれが自分で決めているものです。
- Q届出をしていない個人から譲り受けても大丈夫ですか。
- A
犬と猫を合わせて十頭に届かず、住まいと区分できる施設も持っていない個人は、第二種動物取扱業の届出の対象ではありません。届出が無いことがそのまま手続き違反になるわけではない、ということです。
気になるときは、預かっている頭数と場所のことを聞いてみてください。
- Q自治体のセンターなら、条件は通りやすいのですか。
- A
そうとは限りません。水戸市は先に飼っている犬猫を含めて原則二頭以下としていますし、さいたま市は年齢に上限を置いています。
一方で広島県は県外の人にも譲渡しているので、申し込む先の公式ページをそれぞれ読んでみてください。
まとめ
里親の条件を決めているのは法律ではなく、譲り渡す側でした。動物愛護管理法が定めていたのは、十頭以上を扱って施設を構える側の届出と、その先の記録です。
自治体の条件は公開されているので、住所と年齢と先住動物の扱いを読み比べると、自分がどこなら当てはまるかを確かめられます。断られた理由を条文に探すより、条件が読める先から当たるほうが早く進みます。




