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犬の鳴き声の苦情|保健所が動く条件は条文に決まっている

犬の鳴き声の苦情はどう進むのか。保健所が動く条件は条文に決まっている 犬
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近所の犬が長く鳴いていて眠れない。あるいは、自分の犬のことで苦情が来たと知らされた。どちらの側から調べはじめても、出てくるのは体験談と掲示板の書き込みばかりで、このあと何がどう進むのかは分かりません。

ところが行政が動くかどうかは、気持ちの問題ではなく条文で決まっています。動物愛護管理法と、その施行規則に、都道府県が手を出せる場面が具体的に書いてあります。鳴き声はそこに名前が挙がっていて、同時に、満たすべき条件も並んでいます。

この記事では、行政が動く条件と、進んでいく順番、そして罰が出る場面だけを条文から取り出して並べます。静岡県と名古屋市と神奈川県が公式ページに何と書いているかも、あわせて載せました。

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行政が動くには、条文上の条件がある

苦情を伝えれば自治体がすぐ動く、という仕組みではありません。動物愛護管理法の第二十五条は「環境省令で定める事態」が生じていると知事が認めたときに手を出せる、という書き方をしています。その事態の中身は施行規則にあるので、そこまで読むと線がはっきりします。

鳴き声は、第一号に名前が挙がっている

施行規則の第十二条が、法第二十五条第一項でいう事態を定めた条文です。四つの号が並んでいて、その一番目が音です。

動物の飼養、保管又は給餌若しくは給水に伴い頻繁に発生する動物の鳴き声その他の音

残りの三号は、ふん尿などの臭気、敷地の外へ飛ぶ毛や羽毛、そして多数のねずみやはえなどの衛生動物です。鳴き声は、こうした生活環境の問題のひとつとして扱われています。

一人が一度伝えただけでは、要件に届かない

ただし号に当てはまるだけでは足りません。同じ第十二条の柱書に、こう書かれています。

周辺地域の住民(以下「周辺住民」という。)の日常生活に著しい支障を及ぼしていると認められる事態であって、かつ、当該支障が、複数の周辺住民からの都道府県知事に対する苦情の申出等により、周辺住民の間で共通の認識となっていると認められる事態

「著しい支障」に加えて、「複数の周辺住民」「共通の認識」まで条件に入っています。つまり一人が一度伝えただけの段階では、条文上の事態には届いていません。

ただし条文はそこで終わっていません。この柱書には続きがあり、日常生活に特に著しい支障を及ぼしているものとして特別の事情があると認められる事態も、同じく対象に含まれます。要件に届いていないことと、相談できないことは別なので、まずは窓口に状況を伝えておくほうが、あとの判断が早くなります。

手は四段ある|指導・助言から立入検査まで

事態が認められたとき、知事が取れる手は一つではありません。第二十五条は段をつけて並べていて、いきなり強いほうから始まる形にはなっていません。順番を知っておくと、通知が届いたときに今どこにいるのかが読めます。

第一項が入口です。

動物の飼養、保管又は給餌若しくは給水に起因した騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等によつて周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、必要な指導又は助言をすることができる

第二項で勧告に上がります。

当該事態を生じさせている者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる

命令はさらにその先で、勧告が守られなかったときに初めて出てきます。

前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に係る措置をとらなかつた場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる

第五項には、報告を求めたり立ち入って調べたりする権限が置かれています。

報告を求め、又はその職員に、当該動物の飼養若しくは保管をしている者の動物の飼養若しくは保管に関係のある場所に立ち入り、飼養施設その他の物件を検査させることができる

罰が出るのは、命令を破ったときだけ

苦情が来た時点で罰があるわけではありません。罰則の条文は、置かれている場所が限られています。

第二十五条第三項又は第四項の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第二十五条第五項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、二十万円以下の罰金に処する。

罰金が出るのは、命令に従わなかったときと、報告や検査を拒んだときです。指導や勧告の段階にはどちらも置かれていないので、連絡が来たときに何を求められているのかを確かめておくと、落ち着いて動けます。

苦情を受け取った側に起きること

飼い主の側から見ると、最初に来るのは第一項の指導か助言です。そこで何をどう直すかを決められれば、勧告へ進む理由がなくなります。逆に放っておくと、条文の別の入口が開くことがあります。

鳴き声は「虐待を受けるおそれ」の入口にもなる

第二十五条第四項は、生活環境ではなく動物のほうを見た条文です。その事態もやはり施行規則で定められていて、第十二条の二の第一号が鳴き声です。

動物の鳴き声が過度に継続して発生し、又は頻繁に動物の異常な鳴き声が発生していること。

ここで目を引くのは、号そのものではなく柱書のほうです。

当該事態を生じさせている者が、都道府県の職員の指導に従わず、又は都道府県の職員による現場の確認等の当該事態に係る状況把握を拒んでいることにより、当該事態の改善が見込まれない事態

指導に従わないことと、現場を見せないことが、要件そのものに書き込まれています。最初の連絡にどう応じるかで、進む先が変わる作りだということです。求められている内容をその場で書きとめておくと、次に何が来るのかが分かります。

なぜ警察ではなく、自治体なのか

検索すると警察という言葉もよく出てきますが、第二十五条の主語は最初から最後まで都道府県知事です。音を扱う別の法律にも当たってみましたが、犬の鳴き声はそこに入っていませんでした。

騒音規制法は、動物を対象にしていない

騒音規制法が規制しているのは、工場や事業場に置かれる特定施設、政令で定める特定建設作業、それに自動車から出る音です。法律の本文を通して検索しても、「動物」も「犬」も一度も出てきません。

軽犯罪法にも音の条文はありますが、挙げられているものが違います。

公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者

並んでいるのは人声と楽器とラジオで、しかも公務員の制止を聞かなかったことが前提になっています。犬の鳴き声がここに当たるとは条文からは読めないので、この記事では警察の話を広げません。なお神奈川県は、虐待を見かけた場合についてだけ、公式ページでこう案内しています。

緊急の場合は警察に通報してください。

自分の自治体で、窓口と書きぶりを確かめる

法律と規則は全国共通ですが、どこに連絡するかと、受けた側が何をするかは自治体ごとに違います。公式ページの書きぶりにも差があるので、三つ並べておきます。自分の地域の言葉を先に読んでおくと、連絡したあとの流れが見えます。

自治体公式ページが案内している窓口書かれている対応
静岡県管轄の保健所まず当事者と住民同士の話し合い
名古屋市保健センター(苦情)飼い主への飼い方の指導等
神奈川県最寄りの保健福祉事務所等適正飼育に関する相談
犬の鳴き声について公式ページが案内している窓口(静岡県・名古屋市・神奈川県)

静岡県は、行政より先に当事者どうしを置いています。

直接申し出ることが困難であるならば、地域の問題としてとらえ、住民同士の話し合いによって解決することが重要です。

そのうえで、保健所の動きについてはこう書かれています。

状況によっては、飼い方指導の一環として飼い主宅を訪問し、犬の鳴き声について苦情がある旨をお伝えしますので、管轄の保健所までお知らせください。

これは静岡県のページに書かれていることで、全国の決まりではありません。法第二十五条には、誰の苦情かを伝えるかどうかについての規定がないからです。名古屋市は窓口の役割を分けていて、苦情の例として鳴き声を挙げています。

保健センターは、犬や猫などのペットに関する苦情を受け付け、飼主に対し、適宜、飼い方の指導等を行っています。

神奈川県は、放し飼いと鳴き声をひとつの設問にまとめたうえで、相談先だけを示しています。

飼い犬の適正飼育に関する相談については、最寄りの保健福祉事務所等にご相談ください。

条例を持っている自治体もあります。東京都の条例は、飼養者が守ることのひとつとして鳴き声を名指ししています。

異常な鳴き声、体臭、羽毛等により人に迷惑をかけないこと。

ただし東京都の条例に、鳴き声を理由とする勧告や命令の規定はありません。条例の措置命令は、動物が人の生命、身体や財産を侵害したとき、または侵害するおそれがあるときのものだからです。鳴き声の手続きは、条例ではなく法第二十五条に乗ることになります。

よくある質問

ここまでの内容から、どちらの側からも聞かれやすいものを三つまとめました。

Q
一度伝えただけでは動いてもらえないのですか。
A

施行規則が定める事態には「複数の周辺住民」「共通の認識」という条件が入っているので、ひとりが一度伝えた時点では、まだ要件を満たしていません。

ただし同じ条文には、特別の事情があると認められる事態も並べて書かれています。窓口に状況を伝えること自体は、いつでもできます。

Q
苦情が来たら、罰金になりますか。
A

罰金が置かれているのは、命令を破ったときと、報告や検査に応じなかったときに限られます。指導や勧告の段階には罰則がありません。

ただし、指導に応じないままでいると、第二十五条第四項が定めるもう一つの事態に当てはまってしまうことがあります。通知が届いた時点で何を求められているのかを窓口に確かめておくと安心です。

Q
警察に連絡してもよいのですか。
A

動物愛護管理法第二十五条の主語は都道府県知事で、警察は出てきません。騒音規制法も、対象は工場や建設作業や自動車で、条文に「動物」「犬」は出てきません。

神奈川県は虐待を見かけた場合についてだけ、緊急のときは警察へと案内しています。鳴き声そのものについては、まず自治体の窓口に伝えるのが条文に沿った順番です。

まとめ

鳴き声で行政が動くかどうかは、条文が条件を決めていました。著しい支障があり、複数の住民の間で共通の認識になっていること。そのうえで手は指導・助言から始まり、勧告、命令、立入検査と段を上がります。

罰金が出るのは命令を破ったときと検査を拒んだときだけで、苦情が届いた時点では置かれていません。どちらの側にいても、最初の連絡にどう応じるかが分かれ目になります。自分の自治体の窓口と書きぶりは公式ページで確かめられますので、先に読んでおくと落ち着いて動けます。

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