散歩中に草の上でごろんと転がる。家では壁やソファの角に体をこすりつける。食後に口のまわりをカーペットにこすりつける。
どれもよくある行動ですが、なかに1つだけ、性質の違うものがまざっています。
- 草・家具・人・顔まわり。こすりつける場所ごとの意味
- お尻を床にこすりつけるのは、別の相談ごとであること
- 回数が多いときに皮膚を先に疑う理由
- やめさせようとかまうと、かえって増える仕組み
- 動物病院に相談したほうがよい様子
場所でわかる、こすりつけの意味
草や地面の上で転がる
散歩コースの決まった場所で、決まって転がる犬がいます。背中や首を地面に押しつける動きです。
強いにおいのある場所ほど起きやすく、他の動物のにおいが残っているところが選ばれがちです。
シャンプーの直後に転がる犬もいます。慣れたにおいに戻そうとしている、と説明されることが多い行動です。
家具・壁・人に体を寄せてこする
通りすがりに体を当てていく動きです。あいさつや甘えの延長として出ることがあります。
強く押しつけるのではなく、当てて通り過ぎる程度なら、そのまま見ていてかまいません。
食後に口のまわりをこする
食べたあと、カーペットやソファに顔をこすりつける犬は多くいます。口のまわりを拭いている動きです。
食事のたびに毎回、しかも長く続くようなら、口の中や歯ぐきの状態も一度見てもらってください。
お尻を床にこすりつけるのは、別の話
体をこすりつけるのと、お尻だけを床につけて引きずるのは、分けて考えてください。
中央動物専門学校の解説によると、肛門嚢は「肛門の左右に対のような形でついている袋」で、「時計の4時と8時の位置」にあります。
「床にお尻を落とし、ずるずるとこすりつけるように歩く」動きは、「肛門に違和感を持っている可能性が高い状態」と説明されています。
同解説では、分泌物がたまると肛門嚢炎や破裂につながることがあるとされています。排便時に痛がる様子があれば受診の目安です。
しぼり方や頻度、病院に行くべきサインは別の記事にまとめています。

⚠️ 獣医師・専門家へのご相談のお願い
犬の健康・行動に関することは、かかりつけの獣医師にご相談ください。この記事は診断や治療の判断に代わるものではありません。
回数が多いときは、皮膚を先に疑う
1日に何度も、同じ場所ばかりを、長い時間こすりつける。この形になったら、気持ちの問題として片づけないでください。
単純に、かゆいのかもしれません。獣医行動学の資料でも、繰り返し出る行動の鑑別に皮膚疾患が挙げられています。
こすりつける場所を見る
いつも同じ部位を当てているなら、そこに原因があります。背中なのか、脇なのか、耳の後ろなのか。
その部分の毛が薄くなっていないか、赤くなっていないか、においが変わっていないか。あわせて確認してください。
舐める、噛む、後ろ足でかくといった動作が同じ部位に出ているなら、なおさら皮膚の可能性が上がります。
やめさせようとかまうと、増える
気になって声をかける、体を押さえて止める。よくやってしまいますが、逆に働くことがあります。
東京大学附属動物医療センターの荒田明香氏は、繰り返し生じる常同障害について「飼い主の不適切な干渉(関心を与えること)によって強化される」と説明しています。
治療の方針としても「体罰や叱責,強要の禁止」が挙げられています。止めさせる方向ではなく、原因を減らす方向で考えます。
やることは3つです。皮膚に原因がないか診てもらう。散歩や遊びの時間を確保する。落ち着ける居場所を用意する。
同資料も、欲求を満たすことと安心できる環境の提供を挙げています。声をかけて止めるより、こちらのほうが効きます。

常同障害という状態もある
頻度も持続時間も明らかに多い場合は、常同障害という状態が考えられます。
同資料はこれを、尾追いや過度の舐め行動などとともに「異常な頻度や持続時間で繰り返し生じる強迫的もしくは幻覚的な行動」と説明しています。
発症しやすい時期にも記載があります。平均発症年齢は、犬では12〜36カ月にあたる社会的成熟期と一致するとされています。
不安や葛藤、欲求不満のある環境で生じやすいともされています。生活のどこに詰まりがあるかを、獣医師と一緒に探すことになります。
- お尻を床につけて引きずる、排便時に痛がる
- 同じ部位ばかりをこすりつける
- その部位の毛が薄い、赤い、においが変わった
- 舐める・噛む・かく動作も同時に増えている
- 呼びかけても止まらない、止めると強く抵抗する
どの場面で、どのくらいの時間続くか。動画に撮っておくと診察で正確に伝わります。
よくある質問
- Q散歩中に草の上で転がるのは、やめさせるべきですか?
- A
その行動自体は珍しいものではありません。ただし農薬をまいた場所や、他の動物の排泄物があるところは避けてください。帰宅後に体をふいておくと安心です。
- Qシャンプーのあとに必ずこすりつけます
- A
慣れたにおいに戻そうとしている、と説明されることが多い行動です。ただしシャンプー後だけ強く続く、皮膚が赤いといった場合は、洗浄剤が合っていない可能性もあります。獣医師にご相談ください。
- Q肛門腺は自宅で絞ったほうがいいですか?
- A
すべての犬に必要とは限りません。中央動物専門学校の解説では、通常の排便がスムーズにできているなら、そこまで心配しなくてよいとされています。やり方と頻度は肛門腺の記事で解説しています。
- Qストレスが原因ということはありますか?
- A
繰り返し生じる行動は、不安や葛藤、欲求不満のある環境で起きやすいとされています。ただし皮膚疾患などの身体の問題との切り分けが先です。ストレスと決める前に、まず体を診てもらってください。
まとめ
草の上で転がる、家具に体を当てる、食後に顔をこする。ここまでは、そのまま見ていて大丈夫な行動です。
分けて考えたいのは、お尻を引きずるとき、同じ部位ばかりを何度もこするとき。この2つは、気持ちではなく体から見てください。


参考: 荒田明香(東京大学附属動物医療センター)「犬における問題行動」動物臨床医学 26巻3号 98-100頁、2017年。
中央動物専門学校「犬や猫の肛門線絞りは行うべき? 肛門線の役割・ケアについて」2023年1月12日公開。いずれも2026年8月20日に確認しました。

