散歩の途中で急に立ち止まって、道ばたの草をむしゃむしゃ食べる。よく言われるのは「気持ちが悪いから、吐くために食べている」という説明です。
ところが家庭犬を対象にした調査では、この説明を裏づける結果は出ませんでした。日常的に植物を食べる犬は多いのに、食べる前に具合が悪そうに見えた犬も、食べたあとに吐いた犬も、どちらも一部にとどまっていたのです。
つまり草を食べること自体は、体調が悪いという合図とは限りません。この記事では、その調査で分かったことを見たうえで、散歩中にどう対応すればいいのかを整理します。
草を食べる犬は、珍しくない
犬の植物食について報告した獣医学の研究では、飼い主への調査から、68%の犬が毎日または毎週のように植物を食べていたという結果が出ています。ときどき食べる犬まで含めれば、ほとんどの犬が経験する行動でしょう。
そもそも犬は、肉だけを食べる動物ではありません。東京大学附属動物医療センターの荒田明香氏は、犬の摂食様式について「犬は、雑食性の強い肉食動物である」と述べています。植物が口に入ること自体は、体のつくりから外れた行動ではないわけです。
「吐くために食べている」は、調査では裏づけられなかった
同じ研究では、食べる前後の様子も集計されています。草を食べる前によく具合が悪そうに見えた犬は9%、食べたあとによく吐いた犬は22%でした。
もし気持ち悪さを解消するために食べているなら、この2つの数字はもっと高く出るはずです。実際にはそうならなかったことから、この研究は、体調不良や嘔吐と植物を食べることのあいだにはっきりした関係が見られなかったとして、植物を食べるのは犬に生まれつき備わった傾向であると結論づけています。
言いかえると、うちの子が草を食べたからといって、それだけで具合が悪いと考える必要はありません。
では、なぜ食べるのか
正直なところ、理由ははっきりしていません。食物繊維を求めている、口さみしい、においや歯ざわりが好き、退屈しのぎ。どの説明もありえますが、どれか一つに決まったわけではないのが現状です。
ただ、飼い主にとって困るのは理由が分からないことではなく、そのまま食べさせていいのか判断がつかないことのはずです。そこで見るべきなのは、犬の気持ちよりその草がどこに生えているかになります。
心配なのは草そのものより、草についているもの
道路ぎわや公園の植え込みは、除草剤や殺虫剤がまかれていることがあります。まかれた直後は見た目で分からないので、掲示が出ていないかを確かめておくと安心です。
もうひとつ気をつけたいのが、ほかの犬や猫の排せつ物がかかっている場所。寄生虫や感染症をひろう経路になるので、電柱のまわりや、においを嗅ぐ犬が集まりやすい場所の草は避けたほうが無難です。
観葉植物や園芸種のなかには、犬が口にすると中毒を起こすものもあります。散歩コースだけでなく、家の中やベランダに置いている植物も一度見直しておくとよいでしょう。
やめさせたいときは、叱るより先回りする
草を食べるのは生まれつきの傾向とされている以上、叱ってやめさせようとしても、飼い主から目を離した隙にやることが増えるだけになりがちです。それよりも、草に顔が向く前に呼び戻して歩きだすほうが早く収まります。
散歩の前に食物繊維の多いおやつを少し与えておく、においを嗅ぐ時間を別の場所でしっかりとる、といった方法で草への関心が下がることもあります。試してみて変わらなければ、無理に消そうとせず、危ない場所だけ避ける方針に切り替えて構いません。
動物病院で相談したい様子
草を食べること自体より、次のような様子が続くときのほうが気にかけたいところです。
草を食べたあとに何度も吐く、吐こうとしても出ないことが続く
急に草を食べる量や回数が増えた
食欲が落ちている、便がゆるい状態が続いている
元気がない、体重が減ってきた
除草剤がまかれた場所の草を食べてしまった
除草剤を口にした心当たりがあるときは、様子を見ずに連絡してください。いつ・どこで・どのくらいの量かを伝えられると、そのあとの判断が早くなります。
まとめ
犬が草を食べるのは、多くの犬に見られる行動です。「吐くために食べている」という説明は、調査では体調不良や嘔吐とのはっきりした関係が見られず、生まれつきの傾向と結論づけられました。食べたからといって、それだけで体調を疑う必要はありません。
気にかけたいのは草そのものではなく、除草剤や排せつ物がかかっていないかという場所の問題です。危ない場所を避けたうえで、吐く回数が増えたり食欲が落ちたりしたときだけ、体のほうへ目を向ければ十分でしょう。


