撫でている途中で愛犬が「ふーっ」と長い息を吐いて、呆れられたのかなと感じたことはないでしょうか。人のため息は疲れやがっかりと結びつくことが多いので、同じ意味に読み取ってしまいがちです。
ところが犬のため息は、満足しきってゆるんだときにも、期待が外れたときにも、同じ「ふーっ」という音で出ます。音そのものからは区別がつきません。手がかりになるのは、その息が出る直前に何があったかのほうです。
この記事では、犬のため息をどう読み取るかを場面ごとにまとめました。あわせて、ため息だと思っていた音が別のサインだったときの気づき方も紹介しています。
犬のため息は、深く吸って長く吐く息
犬のため息は、鼻先から「ふーっ」あるいは「ふん」と、いつもより長い息が抜ける動きです。胸やお腹が一度大きくふくらんでから、ゆっくりしぼんでいきます。
回数としては多いものではなく、たいていは1回きりで終わります。そのあとすぐ普段どおりの呼吸に戻り、犬自身も何事もなかったように過ごすのが、ふつうのため息です。
ため息の意味は、その直前に何があったかで変わる
ため息の音は場面が変わってもほとんど同じで、高さや長さから気持ちを当てようとしても行き詰まります。近道になるのは、息が出る直前の数十秒を思い出すこと。よく出る場面を4つに分けて見ていきましょう。
遊びや散歩のあと
しっかり体を動かしたあとに伏せの姿勢で長い息を吐くのは、緊張がほどけて休息へ切り替わるところです。このときは前足の間に顎を下ろしたり、力が抜けて横向きに崩れたりと、姿勢もいっしょにゆるみます。そのまま眠りに入ることも多いので、声をかけずにそっとしておくのがおすすめです。
要求が通らなかった直後
おやつをねだって見つめていたのに何ももらえなかった、遊びに誘ったのに応じてもらえなかった。そうした直後のため息は、働きかけをやめて次の行動へ移る切り替えのように見えます。このあと犬が別の場所へ移動したり、その場に伏せたりするなら、いま働きかけを切り上げたと読んで差し支えありません。
がっかりしているように映るので気になりますが、ため息のたびに応じていると、その音が要求のきっかけとして定着していくことがあります。少し落ち着いてから改めて遊びに誘うほうが、お互いに分かりやすいはずです。
撫でられている最中
撫でているときのため息には、気持ちよくてゆるんでいる場合と、そろそろ終わってほしい場合の両方があります。見分けたいときは、手を止めてみるのが確実です。
もっと撫でてほしければ、犬は手に鼻を押しつけたり体を寄せ直したりして続きを求めます。反対に、そのまま体を離す、顔をそむける、立ち上がって別の場所へ行くようなら、いったん切り上げてほしいというサインになります。
寝る前や寝ているあいだ
寝床で体勢を整えたあとのため息は、体の力を抜く動きの一部です。眠っているあいだに同じような長い息が出ることもあり、これも珍しいものではありません。
ただし眠っている最中の音は、ため息ではなくいびきかもしれません。音が毎晩続いていたり、だんだん大きくなっていたりするなら、別の見方が要ります。
「呆れている」と読まないほうがいい理由
犬のため息を人の感情に置き換えて、呆れた、不満そう、と説明されることはよくあります。ただ、犬が実際に何を感じていたかは、本人に聞けない以上どうやっても確かめられません。
一方で、直前に何が起きたかと、そのあと犬がどう動いたかなら、飼い主にも確かめられます。読み取りをこの2つに絞ると判断がぶれにくくなり、次の対応も決めやすくなるはずです。たとえば要求が通らなかった直後のため息なら、気持ちを推し量るより、そのあとの時間をどう使うかを決めるほうが先に進みます。
その音、ため息ではないかもしれない
ため息のつもりで聞いていた音が、呼吸そのもののサインだったという場合もあります。分かれ目は繰り返すかどうか。何度も出る・毎回同じ場面で出る・音がだんだん大きくなるときは、ため息とは別のものとして見ていきます。
パグやフレンチブルドッグ、シーズーのような短頭種は、鼻から喉にかけての空気の通り道が狭く、呼吸のたびに音が出やすい体のつくりです。獣医療の症例報告では、短頭種気道症候群の症状として「いびき、喘鳴音がもっとも多く認められ、ついで、運動不耐性、呼吸困難、咳などが認められる」と報告されています。
音の種類ごとの見分け方は、それぞれ別の記事にまとめました。


動物病院で相談したい様子
ため息に見える息づかいでも、次のような様子がいっしょにあるなら、早めに動物病院へ相談すると安心です。
長い息や苦しそうな呼吸が何度も続き、休んでも落ち着かない
安静にしているのに呼吸が速い、肩やお腹を大きく使って息をしている
舌や歯ぐきの色がいつもより白い、あるいは紫っぽい
散歩を途中でやめたがる、以前より疲れやすくなった
呼吸の音といっしょに咳が出る、食欲が落ちている
動画に撮っておくと、診察のときに様子が伝わりやすくなります。音が出た場面と、そのときの姿勢がわかるように残しておくと役立つはずです。
まとめ
犬のため息は、音だけを聞いても意味が決まりません。遊びのあとなら休息への切り替え、要求が通らなかった直後なら働きかけの打ち切り、撫でている最中なら続きを望んでいるかどうか。直前の場面と、そのあとの動きを見れば、たいていの場面は読み取れます。
気持ちを言い当てようとするより、そのあと何をして過ごすかを決めるほうが犬にも伝わりやすくなります。繰り返す息づかいや呼吸の変化に気づいたときだけ、別の見方に切り替えれば十分です。



